「泰輝くんに会いたくないの?」

「そりゃ、会いたいけどさ」

「ふーん……ま、無理にとは言わないけど♪」


泰輝と秀くんが帰って来るお盆休みはまだ一ヶ月も先だというのに、慣れない遠距離恋愛で募った私たちの寂しさは既に限界を迎えていた。
悪魔の囁きに心乱された私は、その夜泰輝に電話をかけた。
事の一部始終を話すと、泰輝は電話の向こうでケラケラと笑った。

「さすがだなぁ、那月ちゃん」

「それでね……」

「柚歌も俺ん家に泊まりに来たいの?」

「えっ……」

邪な考えはあっという間に見抜かれた。私が言葉を失っていると、彼は再び笑い声を上げた。

「魂胆が見え見えだよ」

「やっぱり良くないよね、そういうの」

「まぁ、良識ある意見を述べるならダメって言うのが正解かな。日帰りなら大歓迎だけど」

「そうだよね」

「でも……」

「でも?」

「正直な気持ちを言うと……俺も早く柚歌に会いたいし、会ったら帰したくなくなると思う」

「ぷっ!本当に正直!」

「笑うなよ!あ〜、ダメな男だな俺って。これじゃ秀と一緒だよ……」

一人より二人、二人より四人。
私たちは一緒なら、怖いもの知らずだった。
一緒なら何だって出来るような気さえしていた。
そんな思春期特有ともいえる未熟な自制心は、時に無謀な行動を起こさせた。