「そんなに心配ならさ、いつでも俺の所に遊びに来たらいいよ。ね?待ってるから」

小さな子供をなだめるように、泰輝は私の手を握った。その温もりが再び涙を誘うような気がして、私は彼の手をそっと解いた。

「……分かったよ。その時はまた、クッキー作って持っていくね!」

精一杯の空元気で笑って見せると、泰輝は嬉しそうに頷いた。

「泰輝明日何時に出発するの?」

「ん?柚歌には内緒」

「どうして?見送りに行こうと思ったのに」

当たり前のように明日も会えると思っていた私は、彼の意外な反応に面食らった。

「そう言うと思ったからだよ。柚歌、明日見送りに来たら絶対泣くだろ?俺、泣いてる柚歌見たら多分連れて行きたくなっちゃうから」

「私は別に連れて行ってくれても良いんだけどな」

私の戯れ言に小さく微笑んでから、泰輝が首を横に振る。