「大学ってさ、やっぱり可愛い女の子いっぱい居るのかな……」

私が砂浜の上にため息をこぼすと、泰輝は途端にそれを笑い飛ばした。

「柚歌、そんな事心配してたの?」

「だって泰輝モテるんだもん」

数週間前の卒業式の日、泰輝はクラスメイトから告白された事を、少々申し訳なさそうに私に打ち明けてきた。そうでなくとも彼が人から好かれるタイプなのは前々から明らかであって、私の不安は大きくなるばかりだ。

「安心して、俺は柚歌にしか興味ないから。電話もメールもするし、夏休みには帰ってくるよ」
 
私を安心させる為のその言葉が、かえって寂しさを増幅させた。
何故なら春は訪れたばかりで、夏の気配など、まだ微塵も感じられないのだ。
私は涙がこぼれてしまわないように、寄せては返す波の行方だけを見ていた。
何も言えなくなった私の横で、泰輝は困ったような顔をしている。