「早速だけど、準備しよっか!」

「はい!」

ユキさんに案内され、店と繋がる住居スペースに足を踏み入れると、リビングの壁には"泰輝大学合格おめでとう!"の大きな横断幕が掛かっていた。

泰輝に内緒で計画されたヒロさん主催のお祝いパーティーが、今日の昼から開かれる事になっているのだ。
合格発表直後にヒロさんから誘いを受け、私もパーティーの準備を手伝う事になった。

「へったくそな字でしょう?昨日ヒロが一生懸命作ってたんだよ、広告の裏紙だけどね」

ユキさんは横断幕を指差すと、思い出したようにクスクス笑った。

「あはは、泰輝きっと喜ぶと思います!」

「そうだね!サプライズってなんだかワクワクしちゃうなー。若い頃に戻ったみたいで!」

三十代半ばには到底見えない無邪気な笑顔を浮かべて、ユキさんが声を弾ませる。

料理が得意なユキさんに教わりながら、おにぎりや唐揚げ、メインには鍋を作った。
料理が出来上がった頃には、お店のスタッフや常連のお客さんが何人か集まった。
皆でリビングのテーブルを囲み、あとは主役の到着を待つのみだ。

「皆!泰輝が来たぞ!」 

店先で待機していたヒロさんの合図で、ユキさんが慌ててクラッカーを配る。
だんだん近づいてくるヒロさんと泰輝の声を聞きながら、一同は息を殺した。