私たちは恋人と離れ離れになる寂しさを分かち合いながら、遠距離恋愛の大変さなんて本当はまだ少しも理解していなかったのだ。十六歳になったばかりの私たちは、世間も恐れもまるで知らなかった。

程なくして、泰輝と秀くんは指定校推薦枠を見事獲得した。そして二人が第一志望校の合格の通知を手にした頃、街はイルミネーションの光にすっかり彩られ始めていた。

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「ヒロさん、ユキさん、こんにちは!」

「おー柚歌ちゃん、来たか」

「いらっしゃい柚歌ちゃん♪今日は一段と寒いね」

一月の終わり、私はひとりで"ダイビングショップ渚"を訪れた。
この店こそが泰輝が夏の間アルバイトをしていたダイビングショップで、オーナーであるヒロさんと奥さんのユキさんは、何よりも海を愛する仲良し夫婦だ。

紹介したい人が居る。
そう言って泰輝に初めてこの店に連れて来られたのは、まだ付き合って間もない頃。
以来私は泰輝にくっついて、時々ここに遊びに来るようになった。
普段は人見知りな私も、気さくで飾らない人柄の二人とはあっという間に親しくなれた。