「でもまぁ、泰輝は"推薦受かれば冬休みは遊べる"って言ってたよ」

「そうだけどさ、春になったら離れ離れだよ。そんなの辛すぎる!……あ、でも秀くんの所に遊びに行くのは楽しみだなー。一人暮らし始めたら合鍵とかもらえるかも。なんて♪」

「気が早いんだから那月は。まずは二人とも校内推薦受かるといいよねぇ」

「泰輝くんは大丈夫でしょ。スポーツ万能だし成績優秀だし!秀くん大丈夫かなぁ……」

「秀くんだって、三年間クラス委員してるんでしょ?それにいつも元気だし……」

「ちょっと、元気って。柚歌、秀くんの事馬鹿にしてるでしょ!」

「してないよー!」

くるくると変わる那月の表情を見ていると、こちらはため息をつく暇さえ無い。私は彼女のそんなマイペースさが実は結構好きなのだ。

「そうだ、柚歌はどうだったの?夏休み」

好奇心旺盛な子どもみたいな目をして、那月が身を乗り出す。

「まぁ……ちょっと色々あったんだけど、私も楽しかった!」

「色々って何?」

「ん?内緒♪」

「えーずるい!これはじっくり聞く必要がありそう」

残暑の厳しさなどお構いなしに、新学期はスタートした。
泰輝と秀くんは入試の準備で忙しくなり、私と那月はお互いの寂しさを埋め合うように今まで以上にいつも一緒にいた。