「そう言われても、それ」

マルの腰を指す。

マルの身に付ける鎧に血痕が付着していた。

「ええっ! いつの間にあたし怪我してたの? ジュ、看病してくださいー!」

「おい、違うだろ」

「あ、バレてます?」

「擬態する時、見本にした鎧に付いていたんだろ」

「あーあ、残念っ」

「全く」

「レアー。今、ジュに傷付けられた私の心の傷も治してー」

マルはレアに駆け寄る。

レアは詠唱を中断して、逃げ回る。

「マル! レア!」

ジュは大きな声で呼び戻す。

マルとレアはしょんぼりして歩いて戻ってきた。

レアは再び治療を始める。

「そういえば、マル」

「何ですか?」

「どうして、分泌物の玉を相手の口に当てなかった? 口に当てれば窒息できたのに全て足元と腕に当たっていた」

「ジュはあまり殺害を好まないので」

「そうか、すまないな」

「って言っても、司会者だけは違いますけど」

「そう言えば、司会者は腹部に直撃していたな」

「だって、何かといちいち実況するから煩くてつい…」

「構わないよ。それでも殺していないからね」

「でも、今回は熊達の追撃したから、生存者は居ないと思います」

「ああ。仕方ないさ。それだけの事を人は何年も続けてきたんだ」

「はい」

「仲間が次々と神隠しにあっていると熊の長から依頼を受け、この都市を探って正解だった。真相を見つけるのが長引くとそれだけ犠牲になる熊が増える。山を焼き払ってまで熊を追い込んだのはやり過ぎたね」