水の玉が司会者に飛んでいく。

司会者の腹部に直撃した。

ぐはっと悶える声を漏らしながら倒れ込んだ。

その時、出入り口で悲鳴が聞こえた。

観客は出入り口から観客席に散っていく。

出入り口の近くに居る人から、血が噴き出した。

「よし、来たか…」

ジュが膝から崩れる。

持っていた剣を杖代わりにして、体を支える。

「ジュ! しっかりして!」

マルの声が体の中から聞こえる。

「大丈夫だ、マルも大丈夫か?」

ジュは返す。

「はい。ダメージを受けていませんから」

「良かった。レア! 回復魔法を!」

ジュは叫んだ。

「うん!」

小学生位のフリルの可愛い女の子が観客席からぴょんと飛び降りる。

その女の子は、ジュのもとへ駆けてきた。

「凄い傷…。詠唱する」

熊はジュから口を離した。

目を丸くし、同様で体が小刻みに震える。

「ほら、仲間が迎えに来たよ」

出入り口には、大勢の熊が観客達を一網打尽にしていた。

観客や兵はまるで子供の玩具のように宙に舞う。

一部の観客は戦いを挑むが、人が熊に敵うはずがない。

兵達は水の玉によって身動き出来ずに、熊の攻撃を受ける。

一通り、片付けた熊達は闘技場の中央に集まった。

大中小の体の熊達。

親熊の影に隠れる子熊も居る。

動揺していた熊の目に安堵の光が入った。

それも束の間、体の左側を下にして倒れ込んだ。

そして、そのまま静かに息を引き取った。

少し口角が上がり、穏やかな表情だった。