ぼろぼろの刃に太陽光が当たり、地面へ反射する。

その光は地面の無造作な大小の石ころに当たり、乱反射する。

こんな刃では棍棒のように叩く事しかできない。

すぐに勝敗を決めないように、熊は傷だらけに負傷させて、人には使い古した剣を持たせるのだろう。

さて、始めようか。

世直しヒーローショーを!

熊は前足を踏み込み、ジュに突進する。

熊が目の前に差し掛かった。

ジュは剣を下ろして、目を閉じた。

熊は勢いのまま私の左腕を噛んだ。

左腕の骨に熊の牙の鋭さが響く。

予想以上の痛みに顔を歪める。

歓声が止む。

熊の攻撃を受け止める行動が余程予想外だったのだろう。

噛まれた傷口からじわりと血が溢れ出る。

血は腕の腱の凹凸に沿って、指先へさらさらと流れ、ぽたぽたと滴る。

「もう大丈夫だ。ずっと怖かったんだね」

ジュは激しく噛み付き離さない熊の顔を見て優しく言う。

熊の黒目は、おどおどと揺れ動いている。

「マル! いくぞっ」

ジュは叫んだ。

「はい!」

鎧の首元の隙間から、ぬめりとしたスライムが顔を出した。

そのスライムは、ジュの首をかぷっと噛む。

スライムはジュの中に取り込まれて姿を消した。

ジュは空に剣先を掲げた。

「観客よ、見ろ! 動物に恐怖を与え、人は怖い存在だと植え付けてきた姿だ!」

ジュの声は闘技場に木霊して、空へ鋭く突き上がった。

「ジュ! それ以上、出血しては危険です」

マルの声がジュの体の内側で聞こえる。