コロッセオのような円形の闘技場。

歓声が反響して音がうねる。

私はぺらぺらの兜と鎧を纏い、剣を握り、その歓声を浴びている。

足元をからりとしたそよ風が通り過ぎる。

「今日が初戦のジュだ! 剣闘士になる前は何と勇者学校を通う優等生。ひょんな事から罪人に堕落。さて、勇者の卵はどんな闘いを見せるのか。盛大な歓声をお願いします!」

司会者は拡声器を使って、私を紹介した。

ぎらついた歓声が降り注ぐ。

それを煌びやかな宝飾と赤いドレスを纏った女性が高みの見物している。

足を組んで椅子に座っている。

この闘技会の主宰者だ。

「盛り上がって参りました! さあ始めましょう、熊を放て!」

司会者は言うと、ジュの向かい側に在る鉄格子が開いた。

手足に枷を付けられて、太い鎖に繋がれた熊が出てきた。

鎖は鉄格子の中へと繋がっている。

枷は手足に食い込み、じゅくじゅくとした肉が露出している。

熊は牙を剥き出して雄叫びを上げた。

その雄叫びに観客は一段と高揚する。

ばちんという音と共に熊の鎖が解かれた。

鉄格子は閉じられる。

熊は鎖をひきずりながら、ジュにのさのさと近づいてくる。

ジュの身長の二倍はある。

間合いに入ったのか、熊はぴたりと止まり、ジュと対峙する。

熊の毛並みに太陽光が当たる。

くすんだ毛並みは光を吸収する。

熊の体には鞭で打たれて傷だらけだった。

ジュは剣を構える。