『真ちゃん、好きです!』
 付き合ってください、と何度言ったことだろうか。
『俺はお子さまとは付き合いません』
 返ってくる言葉は変わらない。
 でも、少しでも彼との時間を過ごしたかったわたしは、何度振られてもこのひとときを大切に思っていた。
『お子さまじゃないでーす!もう結婚だってできる年齢なんでーす!』
『俺から見たら、おまえらなんてみんなお子さまなんだよ』
『じゃあどうやったらひとりの女として見てくれるのよ!』
『だからオレは無理なの』
 こんなやりとりばかりだったけど、大好きな時間だった。
『無理じゃないよ。わたしを好きになってください』
『まだ言うか!』
 会えば好きだと言って追い回した。
 まわりの誰にも知られていない。秘密の恋。
 こんな時間が、ずっと続くと思っていた。
『あのな、森本…』
 はじめて真ちゃんが迷惑そうな顔ではなく、真剣な瞳でわたしを見つめ、ごめんと頭を垂れたことは今でも忘れない。あれは、卒業式の日だった。
 あの日、わたしの恋の有効期限は切れたのだ。