「小春、なにしてるの?ってか、先生はなんて?」
職員室の前で、いつの間にか大きな絵に見入っていた私は、夢の声にはっとした。
「あ、うん、合格おめでとうってさ」
季節がながれ、わたしたちはもうすぐ卒業式をひかえていた。
長いようで短かった高校生活が終わる。
「でも意外。小春が文学部に行くなんて」
「夢が教育学部に行く事実よりはマシよ」
ふたりで顔を見合わせ、お互いに苦笑した。
わたしも、まさか自分が文学を好んで大学でまで勉強することを選ぶとは、自分でもいまだに信じられないくらいだった。
「はは、たしかに。で、なに見てたのよ?」
言いかけて、ああ…と夢も気付いて優しい瞳でわたしと同じ方向に視線を向ける。
「この絵、これきれいよね。最初に見たとき思わず感動したもん」
「え?夢にそんな感傷的な一面があったの?」
「は?バカにしてんの!」
うそうそ!と頭を振って、わたしたちは笑う。
そういえば、入学してすぐ、夢といっしょに校内探検して怒られたっけ。
そして、この絵を見つけた。
とてもとても大切な、そんな気がするこの絵を。
「ん?どうしたの、小春?」
「何だか、懐かしいの」
「もうすぐあたしたち、こことはお別れだもんね」
少し間をおいて、うん、と答えたわたしはそれでも鼻の奥がつんと痛んで今にも泣いてしまいそうだった。
なぜだかわからない。いろんなことがうまくいって、本当に本当に幸せなのに。
だけど、どうしてだろう。赤々と燃えるように世界を照らす美しいこの絵の前でわたしは、前にも一度、とても幸せだと思ったことがあるような気がした。
職員室の前で、いつの間にか大きな絵に見入っていた私は、夢の声にはっとした。
「あ、うん、合格おめでとうってさ」
季節がながれ、わたしたちはもうすぐ卒業式をひかえていた。
長いようで短かった高校生活が終わる。
「でも意外。小春が文学部に行くなんて」
「夢が教育学部に行く事実よりはマシよ」
ふたりで顔を見合わせ、お互いに苦笑した。
わたしも、まさか自分が文学を好んで大学でまで勉強することを選ぶとは、自分でもいまだに信じられないくらいだった。
「はは、たしかに。で、なに見てたのよ?」
言いかけて、ああ…と夢も気付いて優しい瞳でわたしと同じ方向に視線を向ける。
「この絵、これきれいよね。最初に見たとき思わず感動したもん」
「え?夢にそんな感傷的な一面があったの?」
「は?バカにしてんの!」
うそうそ!と頭を振って、わたしたちは笑う。
そういえば、入学してすぐ、夢といっしょに校内探検して怒られたっけ。
そして、この絵を見つけた。
とてもとても大切な、そんな気がするこの絵を。
「ん?どうしたの、小春?」
「何だか、懐かしいの」
「もうすぐあたしたち、こことはお別れだもんね」
少し間をおいて、うん、と答えたわたしはそれでも鼻の奥がつんと痛んで今にも泣いてしまいそうだった。
なぜだかわからない。いろんなことがうまくいって、本当に本当に幸せなのに。
だけど、どうしてだろう。赤々と燃えるように世界を照らす美しいこの絵の前でわたしは、前にも一度、とても幸せだと思ったことがあるような気がした。