知り合って二ヶ月も経たないうちに、一人暮らしの家へ泊まりに来るようになって。次の日が仕事だろうと関係なく、ふたりでよく夜更かしをした。

 人がバンバン撃たれるスパイ映画も、砂糖より甘ったるい恋愛映画もたくさん見た。
 同じ毛布にくるまって、お互いに黙々とSNSをやっているだけの時間も苦痛じゃなかったし、かと思えばいきなりくすぐり合いになって笑い転げたり。

 ひと通り感情を吐き出したら、君は煙草をふかし始める。それは決まって、心を取り戻そうとしている時だ。

「それやめてってば。灰が落ちる」
「ああ、ごめん。そいえば、レナは嫌いだったね」
「私が吸わないだけだから。でも部屋では禁止ね」
「はーい。以後気をつけます」

 朝だったら聞き返すくらいの大きさで、横に置いてある飲みかけの缶へ煙草を落とす。一本、二本、ビールの空は三本とも君のだ。

 煙草も飲酒もほどほどにね、なんて言うつもりはないけれど。ただ、明日もちゃんと目を覚ましてくれたらいいと思っている。

 眠いのか、面倒か分からないけど、夜の君はたまに適当だった。
 それもまた居心地が良くて、ふいに抱き寄せられて眠るのも安心して、好きだった。

 この温かい肌から、いつの間にか抜け出せなくなっていた。