二十三の春。
 職場で出会った君とは、話した瞬間からすぐに意気投合した。
 第一印象は、短めの黒髪がさらさらしていて、キリッとした眉や切長の目が素敵だなって。

 好きなアーティストや食の好み、趣味で小説を書くところも似ていたし、恋人がいない者同士で波長が合っていた。

「ねえ、さくらん」
「その呼び方やめろし。普通に、千秋でいいから」
「あだ名つけたら可愛いじゃん」
「あのなぁー」
「この書類、どう作るんだっけ?」
「あー、それね。ちょっと面倒くさいんだけど……まあ、いいや、貸して」
「自分でやるよ」
「こっちで教えた方が早い。となり、座って」

 なんでも卒なくこなす君は飲み込みが早く、よく仕事のフォローをしてくれた。
 優しいから、つい頼ってしまう私が悪いのだけど、職場では適度な距離感を保つようにと上司に苦言をもらうこともあった。

 周りから見ても私たちは、近すぎるらしい。単に仲が良いだけではなさそうだと、陰口っぽく話題にされている場面を聞いたこともある。

 勝手に噂していればいい。仕事はちゃんとこなしているし、誰に迷惑をかけているわけでもない。

 あまり気に留めることもしないで、私たちは構わずそのままの生活スタイルでいた。