君が私の前から姿を消して、いくつもの季節が過ぎた。
 結局、君にとって私はどんな存在だったのだろう。あの頃を思い出すと、ふと考える。
 友達でなければ、恋人でもない。
 名前のない日々が残したものは、幸せか、それとも後悔なのか。

 子どもたちを寝かせたあと、薄明かりの中でカチカチとパソコンへ向かう。
 諦めたつもりでいた小説を、サイトへ投稿するようになった。
 自分だけの世界で書いていたものを、誰かへ発信するのは勇気がいることだけど。反応をもらえることが何より励みになって、少しだけ踏み出してみたくて。

 たぶん、これが影響しているのかもしれない。リアリティがあって、けれど普通じゃなくて面白いと、SNSで話題になっている小説。

 ブルーハッピーエンド。

 初めて目にした瞬間、心臓が痺れた。
 目頭に熱が込み上げてきて、気付くと乾いた頬を濡らしていた。
 あの頃の私たちは、不器用だけど間違いなんかじゃなかった。
 今があるのは、彼女との時間があったからだと、今なら前を向いて言える。