「支給品はこれだけじゃないよ。ほら、迷宮スパイダーの糸を使った布で戦闘服を作ったんだ。耐久性、アンチマジック効果に優れているから、みんな着てみてね」

 戦闘服は日本人のときの記憶をもとに作った。軽くて通気性もいいはずだ。

「すごいわねえ、これなら地下六階も怖くないわ」

「リタ、気が早いよ。もう一つすごいのがあるんだ」

 僕は袋の中からヘルメットを取り出して被る。

「素材の関係で一つしか作れなかったけど、これは斥候のシドが使ってね。使い方はここに魔力を送って……」

「セラが消えた!!」

 ララベルが目を見開いて驚いている。

「どういうことなの? って、あ、ちゃんとここにいるんだ」

 リタが見えないはずの僕の肩を掴んだ。

「先日、宝箱で賢者のプリズムっていうアイテムが出てきたんだ。これは様々な幻影を空間に映し出す秘宝なんだけど、これを使ってこの『ターンヘルム』を開発したんだ」

 僕はヘルメットを脱いでシドに渡す。

「使い方は簡単だよ、やってみて」

「お、おう……。どうだ?」

「うん、ちゃんと消えているね」

「スゲー、アタシも欲しいな」

 斥候は危険な役目だ。シドにはなるべくリスクを減らしてもらいたい。

「これがあればシドの危険も減るだろう?」

「すまねえ、セラ。俺のために大事な秘宝まで使わせちまって……」

 姿を現したシドの瞳がほんの少しだけ濡れていた。

「でも、迷宮以外の場所では、ターンヘルムはセラが預かっておきなさい」

 リタが厳しい声で言う。

「なんで?」

「シドがスケベだからよ。これを悪用されたらたまらないわ!」

「そ、そんなこと……」

「この前だって私の胸元を覗き込んでいたじゃない! 気が付いてないとでも思っていた?」

「そんなバカな。『隠密』のスキルを発動してたのに、なぜバレた!?」

「やっぱり!」

 シドはカマをかけられたようだ。

「ごめん、シド。ターンヘルムは僕が預かるよ」

「う、うむ……」

 なんとも締まらない新作発表会になってしまったが、これで準備は整った。出発は三日後。デザートホークスは聖杯を探しに迷宮深部へ潜ることが決まった。。
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