戦闘力判定はEプラスか。この程度の実力でカツアゲとは度胸がある。というより自己認識能力の欠如か?

「クソガキどもが!」

 男の仲間が殺到してきたけどメリッサに蹴り倒されていた。三秒くらいの出来事だ。

「それくらいにしておきなよ、メリッサ」

 相手も刃物を抜いていないので、無茶をしないように止めておく。

「うん」

 メリッサも殺すつもりはないようで安心した。

「あいつ、氷の鬼女だ……」

 いざこざを見ていた一人がメリッサの正体に気が付いたようだ。

「ということは、あっちの子どもがデザートホークスのノキアか?」

「ああ、凶悪な盗賊団を一人で壊滅させたって話だ。奴の腹パンをくらうとステキな思い出が十個消し飛ぶと言われている」

 どんな批評なのさ!? そんなスキルは持っていないよ。

「行こう、メリッサ」

「うん」

 僕の顔も売れてきたということかな? でも、みんなに怖がられるのは心外だ。迷宮で傷ついた人を治療したり、近所の子どもに食べ物をふるまったりもしているのに、悪名ばかりが目立っている。世の中ってそんなものなのかな?



 地上に出ると監獄長の放送が響いていた。

「聞け、クズども。俺が若いころと言えば苦労は買ってでもしたものだ。それに比べて貴様らはまるで苦労が足りん!」

 僕とメリッサは同時に苦笑していた。相変わらずくだらない内容だったけど、これを聞いて無事に戻ってきたという実感も湧いた。

「いろいろとありがとうね。机はできあがったら届けるよ」

「うん、私も楽しかった」

 遠ざかるメリッサの背中に声をかける。

「また二人で探索しようね!」

「うん!」

 振り向いたメリッサは誰にでもわかるくらいに笑顔だった。



 家まで戻ってくると、僕の姿を認めたリタ、シド、ララベルが駆け寄ってきた。

「遅かったじゃない!」

「まったくだ。どんなに心配したと思っているんだ!」

 書置きだけを残して出かけたから、三人とも心配してくれたんだな。

「ごめん、ごめん。地下六階の収穫が大きくてつい長居をしちゃった」

「アタシはちっとも心配なんかしなかったさ。セラなら大丈夫ってわかっていたからな」

「ありがとう、ララベル。バナナやマンゴーなんかのお土産があるから部屋の中で話そう」