宝箱の中には様々なものが置いてあった。金晶や銀晶(手に取ったのは初めて)、黒晶に白晶、金属のインゴット各種、迷宮スパイダーの糸を使った反物が五巻き、柄に宝石のちりばめられたショートソード、キラキラ光るプリズムなどだ。

「すごい剣だね」

 ショートソードの刀身は青白く輝き、吸い込まれてしまいそうに美しい。



 『スキャン』発動

 対象:氷狼の剣 全長一一〇㎝ 

 戦いをサポートする氷属性の狼を二体召喚できる



 氷冷魔法が得意なメリッサ向きの武器だ。氷狼の剣の説明をしてメリッサに使ってみるように勧めた。

「やってみる……」

 メリッサが構えた剣から冷気がほとばしり、周囲の空間を冷やしていく。空中には氷の結晶が舞い、振り下ろされた剣から寒風をまとった二体の狼が飛び出した。二体の狼を従えたメリッサは、まるで氷の女王だ。

「すごいよ、メリッサ! 使い心地はどう?」

 メリッサはビュンビュンと剣を振り、そのたびに肌を刺すような冷風が吹きすさぶ。

「手に馴染む。とてもいい」

 どうやら気に入ったみたいだ。さて、こちらのキラキラ光るプリズムは何だろう?


『スキャン』発動

 対象:賢者のプリズム

 光魔法が付与されたプリズム。様々な幻影を映し出すことができる。



 静止画や五秒くらいの動画を空中に映し出すことができるアイテムのようだ。なかなか面白い。消耗品は半分に分けるとして、氷狼の剣はメリッサが、賢者のプリズムは僕がもらうことになった。



   ◇



 地下二階あたりまで帰ってくると、大量の木材、フルーツ、魔結晶を積んだ荷車を引っ張る僕らは注目の的だった。

「よう坊主、がっぽりと儲けてるじゃねーか。俺たちにも少し分けてくれよ」

 ガラの悪い輩が絡んでくる。無視して荷車を引っ張っていると、そいつは僕の肩に手をかけてきた。

「そんなに怖がるなって。魔結晶をちょっと分けてくれるだけでいいんだぜ。おっ、黒晶まであんじゃねーか!」

 荷物に目を止めた男が手を伸ばす。僕はその手首をつかんで軽い電流を流した。これだけ重い荷車を引っ張っている相手に対して腕力で勝てると思っているのだろうか?

「うわたっ!?」

 僕は手首をつかんだまま忠告する。

「他人の物を勝手に触っちゃ駄目だよ」