「顔の部分にコブがあるだろう。あそこが弱点だ」

「わかった」

 メリッサは次々と襲い掛かる枝をすべて避けて幹の部分に飛び込み、曲刀を深々とコブに刺した。だけどコアの部分までは届かなかったようでトレントは動きを止めない。樹皮は柔らかいようで硬く、攻撃をソフトに受け止めてしまうのだ。

 僕も鮫噛剣で襲い掛かる枝を切り払っていくけど、ダメージを入れられている感じがしない。

「セラ、危ない!」

 メリッサの注意がなければやられていたかも。僕は死角から飛んできたトゲ付きのコブを左手で受け止めた。

「パワーだったら負けないぞ!」

 左手一本で枝を引っ張ってトレントを大地に叩きつけた。それでもあまりダメージは入っていないようだ。こうなったらこのまま『解体』してやる!

 左手でトレントを掴んだまま『解体』を発動する。そのとたんにトレントはうめき声を上げて苦しみだした。なるほど、解体を生きている対象に使えば強力な技になるようだ。

 とは言え、完全に解体するには一〇分くらいかかるだろう。多数を相手にする時は実用的ではないことは明白だ。ただ、レベルが上がればもっと早く解体できちゃうかもしれない。それって即死スキルじゃん! そう考えると恐ろしい技だともいえた。

 トレントはもがき苦しむけど、僕の握力は伊達じゃない。やがて動きが鈍くなったトレントにメリッサが飛びかかり、先ほど穴をあけた眉間のコブに再び曲刀を突き刺した。

「ウオオオオオオオーーーーーーーーーンンンンン……」

 スキャンによって死亡を確認。僕らはトレントを倒すことに成功した。

「なかなか手ごわい相手だったね」

「焼くことができればもっと早いのに」

 僕は解体を続け、トレントを板や角材にしていく。全部で三七キロ分の資材を得ることができた。

「これで新しい机が作れそうだ」

「僕のベッドも作れるかな。以前、治療をした人の中に『家具職人』のジョブの人がいたんだ。その人に依頼できないか聞いてみるつもり」

「もしかしてセラは人のジョブがわかるの?」

 メリッサの顔色が変わった。

「そうだけど安心して。メリッサのことはスキャンしていないよ」

「本当に?」

 メリッサは泣きそうな顔をしている。そんなに自分のジョブを知られたくないのだろうか?

「嘘は言わないよ。これからも絶対にしないから」