僕を殴ろうとするピルモアをリタが止めに入ってくれた。ピルモアというやつは周囲に威張り散らすことがカッコいいことだと感じているようで、いつも弱い者いじめをしている。

「まったく……お前みたいなウスノロは使ってもらえるだけありがたく思えよ。ところでリタ、例の話は考えてくれたか?」

「なんのこと?」

「このチームの常駐メンバーにならないかって話だよ。リタの実力なら申し分ない。俺はチームのナンバーツーにしてやったっていいと思っているんだ。なんなら俺の女にしてもいい」

 ピルモアはエッチな目でリタの大きな胸のあたりを見た。リタは美人だしスタイルも抜群だ。でもあんなにいやらしい目で見たら嫌われちゃうと思うけどな……。ほら、露骨な視線にリタが顔をしかめているぞ。

「その話なら前に断ったでしょう。今はどこのチームにも入りたくないし、男も要らないから」

「そう言うなよ。俺の女になれば楽ができるぜ。相手がリタなら結婚だって考えたっていい」

 言いながら、ピルモアはリタの腰に手を伸ばす。ここは収容所だけど、基本的に何もかもが自由だ。囚人が結婚だってできるのがエルドラハという場所である。だけど、リタはピルモアの伸ばした手をピシャリと払った。

「悪いけど、危険な地下迷宮で女を口説くような奴に興味はないわ。油断していると死ぬよ」

「おい、俺は本気なんだぜ。少しは真面目に考えてくれ」

「アンタがこの子くらい礼儀正しかったら考えるくらいはするんだけどね」

 リタは僕の頭に手を置いた。

「チッ、後悔しても知らないからなっ!」

 リタに冷たくあしらわれて、ピルモアは舌打ちしながら去っていった。

「後悔なんてするもんか、最低男が……」

 リタは吐き出すようにつぶやく。リタもピルモアが嫌いなようだ。

「ところで、リタ」

「ん、どうしたの?」

「僕が付き合ってって頼んだら了承してくれるの?」

「へっ?」

 しばらく時間がかかったけど、リタはやっと僕の言った言葉の意味を理解したようだ。急にワタワタしだしたぞ。

「な、何を言ってるの。あれは言葉のあやみたいなもので……。それに、セラはずっと年下なのに……」

 精神的にはそんなに変わらないと思うけどな。リタの方が少し年上くらいかな?

「冗談だよ。でも、かばってくれてありがとう、リタ。おかげで頑張れそうだ」