理由を聞かれるのは初めてだった。でも、なんで僕は世界をみたいんだろう?

「そう望んでいるから、としか答えようがないなあ……。最初はエルドラハにうんざりしていただけなんだけどね。もう、息がつまりそうでさ」

「その気持ちはわかる……」

 メリッサは家臣たちに囲まれている。キャブルさんもタナトスさんも良い人だ。良い人だけにメリッサにかかる責任は重くなる。メリッサは口をつぐんで、聖杯に関してそれ以上何もしゃべらなかった。



 僕とメリッサは地下五階までやってきた。ここまでくると出現する魔物の強さもけた違いになる。でも、僕らにはまだ余裕があった。

「コカトリスって可食魔物だったよね?」

「うん、鶏肉と同じ味」

 僕は討伐したばかりの大きな鳥型の魔物を『解体』した。

「肉を冷凍してもらえる? そうすれば地上に持って帰れるから」

 コクコクと頷いてメリッサが氷冷魔法を使ってくれる。解体した正肉がたちまち凍り付いていく。

「あ、全部じゃなくていいよ。夕飯ようにこっちは残しておいてね。今夜は僕が焼き鳥を作るから」

「うん、セラの料理は美味しい」

「そうかな?」

「うん、とっても……。二人だと楽しい。夜も寂しくない」

「僕もだよ」

 メリッサと二人なら迷宮最深部だって行けそうな気がする。だけど今日はここまでだ。外はもうそろそろ夕方だろう。僕たちも今日のねぐらを探さなければならない。僕らはゆっくりと眠るために、安全地帯になりそうな小部屋を探した。



 夕飯を食べ終わるとすることもなくなってしまった。コカトリスの味は本当にニワトリみたいで、焼き鳥にしても美味しかった。いつか醤油や酒を造れたらタレの焼き鳥にも挑戦してみたい。

 僕とメリッサは壁にもたれて並んで座っていた。特に会話はなかったけど、落ち着いた時間が流れていた。ふと、僕は先日の会話を思い出してメリッサに質問した。

「ねえ、メリッサは自分のことを僕の許嫁って言ったよね。あれはどういうこと?」

「……」

 メリッサの目が泳いでいる。

「メリッサが嘘をついているとも思えなんだ。なんであんなことを言ったのかおしえてほしい」

 魔力を節約するために魔導ランプの明かりは弱に設定してある。小部屋の中は薄暗く、打ち明け話をするにはちょうどいい雰囲気だ。