メリッサは恥ずかしそうにこちらをチラチラ見ている。他の人には読み取れないほど微妙な表情の変化だけどね。

「やあ、メリッサ。もう上がるの?」

「うん。セラはこれから?」

「今日は地下五階に行ってみるんだ」

「一人で?」

「そう、ソロ活動」

「……私も連れて行って」

「メリッサも?」

 コクコク。

「今上がってきたばかりでしょう。疲れてないの?」

 フルフル。

「私なら心配ない。私も行きたい」

 相変わらず言葉は少ないけど、メリッサの決意は相当なものだ。

「セラ殿、姫様は一度言い出したら聞きません。どうかご一緒してはもらえませんでしょうか?」

 タナトスさんにまでお願いされてしまった。

「行こう、セラ」

 他の人には無表情に見えるんだろうな。だけど僕にはわかっている。メリッサは心配そうに僕の返事を待っていることを。

「うん、よろしくね」

 これも他の人にはわかりにくいこと、僕の答えにメリッサは嬉しそうな笑顔になった。



 これがメリッサ以外の他の人なら断っていたかもしれない。これから行く地下五階は滅多に人も行かない危険な場所だ。大丈夫だとは思うけど仲間を守れる絶対の確信はまだない。それを得るために下見に行くのだ。でも、メリッサに関して言えば、おそらく僕より強いんじゃないかと思っている。まだスキャンで見たこともないからわからないんだけどね。

 スキャンを使って確かめてもよかったんだけど、メリッサが相手だと気づかれるような気がしている。それくらいメリッサは隙がないのだ。

「何を見ている?」

「メリッサを」

「なんで?」

「強そうだなあって」

「うん。私は強い」

 二体のブルーマンティスが襲ってきたけど、手元から伸びた鮫噛剣が一体の頭を突き刺し、メリッサの曲刀はもう一体の胴を真っ二つにした。戦闘は一秒もかからずに終わり、僕らは再び会話に戻る。

「ところでさ、メリッサたちも聖杯を探しているの?」

 そう訊くと、メリッサは少しだけ驚いた顔をした。

「うん」

「実はデザートホークスも探しているんだ」

「そうか……。セラは帝国市民になりたいの?」

「帝国市民には興味ないな。ただここから脱出して、世界を見て回りたいって思っているんだ」

「なんで?」