新しい部屋作りは順調だった。マジックボトルとウィンドスタッフを利用してジャグジーも設置した。おかげで毎日リタとララベルが遊びに来ている。風呂上がりにバスタオルを巻いただけの格好でうろうろするから目のやり場に困る日々だ。

 ただ、せっかく綺麗な部屋に引っ越したというのに家具は少ない。飛空艇が運ぶ量はちょっぴりだから、エルドラハで木材は貴重なのだ。

「地下六階に行けば木があるけどな」

 我が家のダイニングテーブルでお昼ご飯を食べていたシドが教えてくれた。シドだけではなくリタもララベルも一緒にご飯を食べている。気温がいちばん高くなるお昼時はエアコンのきいている我が家に集まる率が高い。

「木があるってどういうこと?」

 僕は地下四階までしか行ったことがない。

「俺も数えるくらいしか行ったことはないんだが、地下六階の奥にそういうエリアがあるんだ。そこは高い天井から光が降り注ぎ、まるで森みたいなところなんだぜ」

 地下六階の奥地ともなるとたどり着ける人はまれだ。たとえ木を切り倒したとしても、重い木材を抱えて帰って来られる人も少ないだろう。だけど、一トンもの荷物を持てる僕なら……。



 次の日、僕は仲間への書置きを残し、一人で迷宮へと出かけた。地下六階まで出向いて材木を取ってこようと考えたのだ。家具が欲しいというのは個人的な事情なので、デザートホークスとしてではなくソロ活動にした。ついでに地下五階・六階の様子を探るつもりでもいる。僕の実力は通じるのか、仲間を危険な目に合わせずに済むか、そこら辺のところを見極めるつもりだった。

 食料や水を背負って迷宮の階段に差し掛かると、下の方からフードを被った『黒い刃』が戻ってくるところだった。

「これは若君!!」

 ひときわ大きな声で話しかけてきたのはキャブルさんだ。僕が作ってあげた爆砕の戦斧を肩に担いでいる。でも、なんで若君? そんな呼ばれ方をされたのは初めてだ。

「キャブルさん、こんにちは。爆砕の戦斧はどうですか?」

「実にいいですぞ! 今日もポイズンビートルの頭を一撃で粉砕してやりましたわ。ガハハハハハッ! 若君が婿に来てくだされば黒い刃も安泰、グベッ!」

 キャブルさんの頭がメリッサに粉砕されていた。

「余計なことを言うな」