「わかりません。私はブドウを育てたことはおろか、食べるのだって初めてなんですから。でも、やれるだけやってみましょう」

 ジャカルタさんも初めての作物に興奮を隠せないようだ。固有ジョブが農夫ということもあり、ジャカルタさんは情熱をもって地下菜園の面倒をみてくれている。最初の収穫はもう間もなくだ。

 菜園の管理をジャカルタさんに任せて、僕らは魔結晶の採取に向かった。文明的な生活は快適だけど大量の魔結晶を消費する。エアコン、散水機、魔導コンロ、冷蔵庫、照明、どれ一つして魔結晶抜きでは動かないのだ。

「さあ、今日も稼ぐよ!」

 僕らは実入りのいい地下三階へと移動した。



 休憩時に来週の予定について打ち合わせをした。ところがララベルが申し訳なさそうに謝ってくる。

「来週は活動できないんだ」

「なにか予定でもあるの?」

「来週は親父に連れられて帝都に行くことになっているんだ……」

 ララベルは後ろめたそうに告白してきた。帝都に行くというのは、僕ら一般住民では望むことさえも許されないような夢だ。ここに送られる囚人はみな飛空艇で運ばれるが、出される囚人は一人もいない。ララベルは自分が特別であるということが辛いのだろう。

「でも大丈夫だぜ。アタシは家出してセラの家で暮らすんだ」

 家出少女を家に泊めるの? それはいろいろ問題がありそうだ。

「そんなのダメだって。それにせっかく帝都に行けるんだよ。絶対に行った方がいい」

 シドも僕に賛同してくれる。

「与えられるチャンスは最大限生かすべきだぜ、お嬢ちゃん。見分を広めるのは悪いことじゃない」

「でもさぁ……私ばっかりずるいことをしているみたいで気が滅入るんだよ」

「ララベルはずるなんてしてないさ。まあ僕も飛空艇に乗って外の世界へ行ってみたいけどね」

 それは幼いころからの夢だ。いつになったら叶うかわからないけど、この思いだけはずっと持ち続けたい。そんな僕にララベルは意外な情報をもたらした。

「だったら聖杯でも探してみる?」

「聖杯? なにそれ?」

「大昔から帝国が躍起になって探しているマジックアイテムのことだよ。噂ではここのダンジョンの地下深くに眠っているお宝らしいぜ」

 ララベルの説明を聞いてシドがポンと手を打った。