延び延びになっていた引っ越しをすることにした。僕だけじゃなくてシドも一緒に引っ越して近所に住む予定だ。これで監獄のように狭い部屋ともお別れになる。

 新しい部屋は迷宮の近くで、部屋が五つもあるところにした。それぞれ寝室、書斎、キッチン、風呂、倉庫にする予定だ。元から浴室はないので、あとから改造して使うことにしている。あらかじめ改造の許可は取ってある。

「お風呂かあ、いいなあ」

 リタがしきりに羨ましがっている。メリッサやララベルの家にはお風呂がついているのだけど、リタのところにはないからだ。

「入りに来てもいいよ」

「そ、それは恥ずかしいなあ。でも、セラなら見られてもいいか……」

 よくはないだろう。そんなことになったら気まずくなるから僕も困る。

「そうだ、地下菜園に水浴び場を作ろうか?」

「いやよ」

「えー、どうして?」

「シドが覗くもん」

 その心配は大いにある。シドはおっきなおっぱいが大好きだからリタが狙われる可能性は高い。

「大丈夫だよ、外から見えないシャワールームを作るから。万が一覗いたらフレイムソードで焼いちゃっていいからさ」

「それならいいかな……」

 あそこに作れば土仕事の後もさっぱりできるだろう。ジャカルタさんも喜んでくれるに違いない。

 もともと荷物は少ないうえ、デザートホークスのみんなが手伝ってくれたおかげで、引っ越しはあっという間に終わってしまった。



 ジャカルタさんを護衛しながらデザートホークスは地下菜園までやってきた。

「セラ、今日はいいものを持ってきたんだ。じゃーん!」

 ララベルが小さな包みを渡してくる。中身は赤身がかった黒い粒だ。

「これはブドウじゃないか!」

「えへへ、セラは種付きの果物を欲しがっていただろう? 厨房においてあったから持ってきたんだ」

 さすがは監獄長の厨房だ。一般人の家だと手に入りにくい物までそろっている。

「じゃあ、仕事前にみんなでいただこう。あ、種は飲みこまないようにしてね」
ララベルに感謝しながらみんなで食べた。

「この種から苗木が育ちますかね?」

 ジャカルタさんに聞いてみる。ブドウ畑ができればワインだって作れるぞ。