ピルモアが大声で命令を下した。

「いってくるよ」

「ああ、だが無茶をするんじゃないぞ。なんとしてでも生き残れ」

 僕だってまだ死ぬつもりはない。せっかく転生できたんだ。もう少しくらいこの世界を楽しんでみたかった。



       ◇



 ピルモアのチームは総勢二四人だった。いつも同じメンバーというわけではなく、助っ人やポーターなんかはそのつど雇っている。ピルモアは強いけど人望がないから、固定メンバーになる人は少ないのだろう。

 僕だってわざわざピルモアのチームに入りたいなんて思わない。あんな嫌な奴と付き合うのは、仕事じゃなければ絶対にごめんだ。それこそブラック企業に勤めるようなものだと思う。

「あなた、セラとかいったわね。ひどい顔色をしているけど大丈夫?」

 戦士のお姉さんが僕を気遣ってくれた。この人はたしかリタと呼ばれていたな。赤髪の元気な人で、戦闘力もかなり高い。
ピルモアの仲間というわけではなく臨時の助っ人としてこのチームに参加している。こうやってポーターの僕を気遣ってくれるくらいだから優しい人なのだろう。

「うん、少し体が重いだけだから……」

 本当は歩くのも辛いくらいだけどやせ我慢だ。かわいい女の子の前ではカッコつけたい思春期の僕である。

「そう? ほら、水を飲んで。少しは体調がマシになるから」

 リタは自分の水筒を僕に渡してくれた。辛い時だからこそ人の優しさが身に染みる。惚れてしまいそうだ。リタの言う通り、一口水を飲んだだけで少し体が楽になった気がした。

「ありがとう。なんだか力が出てきたよ」

「それは良かったわ」

 笑顔がかわいい。癒されるなあ……。

「リタは優しいんだね」

「ま、まあこれくらいは……」

 リタは顔を赤らめ、そっぽを向いてしまった。照れ屋さんでもあるらしい。

「おいおい、何をさぼっていやがる!」

 せっかくいい感じだったのに、やってきたのはチームリーダーのピルモアだ。いかつい体を左右に揺らしながら周囲を威嚇して歩いている。動物や魔物の示威行動みたいだ。そうやって自分を大きく見せようとしているのだろう。

「こら、セラ。役立たずが何を突っ立っている!?」

「やめろ、ピルモア。私が水を飲ませていただけなんだから」