「ちょ、おまっ……」

 ズルズルと引きずられながらも男は手を放さない。根性だけはあるようだ。

「すいませーん! お酒をください!」

「赤晶で二〇〇グラムだぞ」

「あります」

 無事にお酒は手に入れた。おや、この人はまだ手を放さないな。

「ちょ、ちょっと話を聞いてくれ!」

「聞きますから喋ってください。あ、向こうで肉を売っている!」

 僕は肉を交換している人の方へと歩いていく。

「待ちやがれ!」

 もう一人が右手首にしがみついてきた。だけど貴重な生肉を諦める気にはなれない。

「そっちこそ待っていてよ。すぐに済むからさあ。うおおおおっ!?」

 僕を驚かせたのは生きたまま売られているニワトリだった。スキャンで確かめると一歳の雌鶏である。

「それ、いくらですか!?」

「坊主が買うつもりか? 言っとくがこいつは赤晶五〇〇〇グラムだぞ」

 エルドラハでニワトリを飼う人間なんて滅多にいない。黒い砂のように本拠地を持っていなければすぐに盗まれてしまうからだ。だけど僕には秘密菜園がある。あそこで飼えば問題はないだろう。上手くいけば新鮮な卵が手に入るかもしれない。

「買った!」

 二人の男を振りほどき、リュックサックから魔結晶のかたまりを取り出した。

「本気で買うつもりか?」

「もちろん、鳥かごはつけてね!」

 取引はスムーズにまとまり、僕は酒と雌鶏を手に入れることができた。あ、でも野菜や果物がまだだったな……。

「そ、そろそろ話しを聞いてもらってもいいか?」

 見ると地上にへたり込んだ二人が情けない顔で僕を見上げていた。あっちこっち泥だらけであざもできている。買い物はまだあるのだけど、なんだか可哀そうになってしまった。

「うーん、手短にお願いします。どういったご用ですか?」

 そう告げると、二人は大きなため息をついた。

「さっきも言ったが俺たちはグランダス監獄長の使いだ。頼むから俺たちと一緒に監獄長のところまで来てくれ。いや、来てください」

 頭を下げて頼まれると断りづらい。

「野菜と果物を手に入れたいんだけど……」

「怪我人がいるんだ。なんとか助けてはもらえないだろうか?」

「怪我人ですって? それを先に言ってください。場所はどこですか?」

「中央棟にある監獄長の居住スペースだ」