地下で集めたサンドシャークの浮袋を組み込み、毎分一〇リットルの水を産みだす機械の設置に成功した。本日はデザートホークスとメリッサ、農業顧問のジャカルタさんにも来てもらってお披露目だ。久しぶりに菜園へ来たけど、ジャガイモやスイカが芽を出していた。成長は順調そうである。

「それじゃあ水を出すよ!」

 スイッチを入れると天井のスプリンクラーが回転して霧状の水を吹きだした。湿った土が黒々と色づいている。

「成功ですな! これで更なる畑を作ることができますね」

 ジャカルタさんがうんうんと頷いて涙ぐんでいる。この人は涙腺が弱いのだ。でも、農業にかける情熱は誰よりも厚いので安心して畑を任せられる。

「今回もたくさんの魔結晶を取ってきたので、交換所で野菜を探してみます。種が取れれば蒔けますからね」

 交換所とは監獄長が管理していて、帝国から運ばれた品物を手に入れることができる場所だ。数は多くないが酒や野菜、果物なんかもある。種付きの野菜や果物があれば栽培できるかもしれない。その日も畑を少し広げてから、僕らは地上に戻った。



 ちょうど飛空艇が到着したばかりで交換所は混雑していた。目当ての荷物を巡って喧嘩まで起きている。

「酒をくれ! 魔結晶ならある!」

「こっちにもだ。紫晶もあるぞ!」

 やっぱりいちばん人気はお酒のようだ。肉や卵なんかの需要も高い。僕の目当ては種付きの野菜や果物だけど、シドやリタのために酒や肉も手に入れるとするか。果敢に群衆に分け入り僕も品物を交換しようとした。ところが、不意に横から伸びた手が僕の手首をつかんできた。

「魔導錬成師のセラ・ノキアか?」

 目つきの悪い二人組が僕を引き留めている。見覚えのない顔だ。なにか用事なのかもしれないけど、僕としてはそれどころじゃない。いい品物はすぐに交換されてしまうので急がなければならないのだ。

「そうですけど、ちょっと待ってもらえますか。今忙しいんで」

「他に酒の欲しいやつはいないか? あと四本だぞ!」

 交換所の職員が大声で煽っている。それなのに男は僕の左手首をつかんで離さない。

「俺たちはグランダス監獄長の手の者だ」

 そう言えば誰もが言うことを聞くと思っている態度で男は話を続ける。だけど僕には関係ない。男を引きずったまま僕は人ごみに分け入った。