演技力はイマイチだけど、サメが相手ならアカデミー賞は関係ないよね。美味しそうな人間に見えればそれでいいはずだ。巨大なシャークは地上から完全に姿を現し、歯をむき出しにして僕に襲い掛かった。

「今だ、みんな!」

 物陰から三本の紫電の矢が放たれる。

「よしっ!」

 って、あれ? 巨大シャークは身を翻してすべての矢を避けてしまった。一発も当たらないだなんて、そんな……。ひょっとしてデザートホークスは遠距離攻撃が苦手なの? サンドシャークのガラス玉みたいな小さな目が小ばかにしたように僕を捕えている。

「このぉ……」

 僕は低く身構えて大地を蹴る。僕の頭を食いちぎろうと飛び跳ねたサンドシャークの下側にステップインした。腰を落とした体勢から繰り出すのは天に向かって突き上げるアッパーだ。

雷竜飛翔拳(らいりゅうひしょうけん)!」

 雷撃のナックルを出力最大で撃ちあげると、サンドシャークの体が二メートルほど浮いた。だがそれで終わりではない。地上に戻せばこいつはまた逃げるだろう。同じ過ちは繰り返さないぞ。

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあ!」

 落下してくるサンドシャークの腹に連撃を叩き込む。突き上げる拳の一発ごとにミシミシとサンドシャークの体が音を立てた。これで最後とばかりに必殺のリバーブローを決める。いや、サメの肝臓がどこにあるかなんてわからないんだけど、そこは気持ちの問題だ。とにかく、サンドシャークは動かなくなった。スキャンで確認するとちゃんと死亡となっている。

「ふう、終わった」

「待ち伏せの意味がなかったね……」

 リタがしょんぼりと肩を落とす。結果的に僕一人で片付けちゃったもんね。

「いやいや、これはセラが悪いぞ」

 シドが文句をつけてきた。

「なんでさ?」

「この紫電の矢、変な方向に飛んでいくぞ」

「ええっ!?」

 メリッサの方をみると、こちらもコクコクと頷いている。どうやら言いがかりをつけられているわけではないようだ。

「そんな、どうして……あっ!」

 同時に射たのがいけなかったのかもしれない。電気には引き付けあったり、反発したりする特徴がある。作用か反作用かわからないけど、そのせいで射線がくるってしまったのだろう。雷撃はインパクトの瞬間に発動しないとダメだったようだ。