僕は夜中までかかって『紫電の矢』を三本作った。採取した紫晶をすべて使ってしまったけど悔いはない。



 翌日は早朝から狩りを開始した。シドの案内で昨日の巨大シャークが潜んでいそうなところを探した。

「見つけたぞ。こいつを見ろ」

 シドの指先には昨日と同じ砂の跡が長く伸びている。太さも同じくらいだから、あの巨大サンドシャークに違いない。僕はさっそく装備を外して身軽になった。

「本当に大丈夫なの。囮なら私が代わるって」

 リタの優しさは嬉しかったけど、素早さは僕の方が上だ。

「いや、私がやろう」

「リタもメリッサもありがとう。でも、この役は僕にやらせて」

 僕が一人で歩いていけばきっと巨大シャークは襲ってくるはずだ。反撃したいけど、そこは堪える。奴は形勢が不利だとわかるとすぐに砂の中へ潜ってしまうからね。

 僕は襲われたふりをしてみんなが待つこの場所まで逃げて転ぶ。奴が僕を食べようと姿を現わしたら、三人が紫電の矢で攻撃するという作戦だ。紫電の矢は消耗品だけど、一発の威力は雷撃のナックルを上回る。それを三発も浴びせるんだから、きっと感電するはずだ。

「それじゃあ行ってくるよ」

 僕は三人に別れを告げて一人で歩きだした。

 迷宮の壁に僕の靴音が響いている。靴底に飛び出しナイフを内蔵したデザートホークスの特別製ブーツだ。つま先には重さ一トンにも耐えられる鋼板も仕込んである。迷宮に現れるのはサンドシャークだけじゃない。僕は他の魔物にも気を付けながら歩いた。

 三〇〇メートルも進んだ頃、さらさらと砂の音が後方から聞こえてきた。どうやら奴が来たようだ。僕は気づかないふりをしてそのまま歩き続ける。やがて距離が縮まると少しずつ速足になって僕は逃げ出す。

 振り返ると石の床からサンドシャークのヒレが見えていた。乾燥させたらフカヒレとして食べられるかな? そう言えば前世でもフカヒレの姿煮って食べたことがない。あとで絶対に試してみよう!

 迷宮を抜けてシドたちが待つポイントへと駆け戻る。後ろのサメは待ち伏せには気が付いていないようで、真っ直ぐに僕を追いかけてくる。走るスピードは僕の方がずっと速いから、相対距離をつかず離れずにして誘い出した。射撃ポイントまではあと一五メートル。

 予定ポイントに到着すると僕はわざと転んでみせた。

「うわあ!?」