すかさずメリッサが曲刀を振るったけど、その攻撃は高い金属音とともに弾かれた。

「硬い」

 剣の直撃が弾かれるだなんて、どんな皮膚をしているんだ!?

「どいてええええ!」

 リタが渾身の力でフレイムソードを叩き込む。胴体をフレイムソードで切りつけられて、巨大なサンドシャークは身を翻して砂の中に潜ってしまった。炎の攻撃は効いたようだけど、巨大シャークはそのまま浮かび上がってくることはなかった。

 メリッサが再び地上に耳をつける。

「逃げていく」

「どっちに行ったか分かる?」

「もう追いつけない……」

 メリッサはすまなさそうに、ふるふると首を横に振った。悔しさが込み上げてきた。もう少しで討ち取ることができたのに……。



 それ以上のサンドシャークは見つからなかったけど、僕らは魔結晶を採取したり、他の魔物を退けたりしてその日を終えた。地下四階だけあって実入りの良い一日になったけど、僕は少しだけ不満だ。昼間の巨大シャークのことが忘れられなかったのだ。

「ごめん、私が止めを刺していれば……」

「リタのせいじゃないよ。最初の一撃で仕留められなかった僕が悪いんだ。最近少し調子に乗っていたと思う。一撃で片付けようとしないで、連撃を心掛けていたら取り逃がすことなんてなかったと思う」

 メリッサにも言われたけど、僕の攻撃は身体能力頼みだ。もっと修練がいると思う。

「まあ、気持ちを切り替えて、違うサンドシャークを探そうぜ」

 シドはそう言ったけど、僕は巨大シャークに固執した。

「やだ」

「やだって、おま……」

「だって、あれだけ大きかったら浮袋だって大きいはずだよ。それを素材に使えば、きっと大きな散水機が作れるはずさ」

「まあな……」

「そうすれば畑だって大きくできるし、作物だっていっぱい作れるよ!」

 シドは少しだけ考える顔をした。

「だったらどうする?」

「待ち伏せする」

「昨日の盗賊みたいにか?」

「たとえが悪いけどそういうこと。昨日手に入れたサンドシャークの歯があるでしょう。あれと紫晶で雷属性の矢を作るよ」

 サンドシャークの歯は鉄をえぐるほど鋭く硬い。皮膚の分厚い巨大シャークにも貫通するに違いない。雷属性の矢の同時攻撃を与えれば動きを止めることができると思う。