「矢じりにするんだよ。この素材は属性魔法もつけやすいからいろんな矢が作れると思うんだ」

 今は素材集めだけして、『改造』は夜の空いた時間にすることにした。



 幸先のいいスタートを切った僕らだったが、サンドシャークはぱったりと姿を現さなくなってしまった。逃げた個体もいるから警戒しているのかもしれない。ただ、地下四階ともなると魔結晶の出現率は高い。僕らは迷宮を回りながら魔結晶を採取した。

「見て紫晶よ!」

 雷属性の紫晶は地下四階より下でなくては見つからないので、リタやシドがはしゃいでいる。

「これさえあれば、ミノンちゃんに会いに行けるぜ」

「スケベじじい……」

「しょうがないだろう、心身ともに若いんだから」

 僕のせいでもあるから黙っておくか……。

「これでも飲み屋の女にはモテるんだぜ。この間だって――」

 武勇伝を語りだそうとしたシドが、不意に地上を見つめて黙った。

「どうしたの?」

「こいつを見ろ」

 石の床には真っ直ぐな砂の跡が長く一筋伸びている。

「サンドシャーク? 一匹しかいないみたいだけど」

「ああ。だがこいつは普通じゃねえ。かなりの大物だ……」

「かなりってどれくらい?」

「わからん……」

 明言できないということは、シドでさえ見たこともない大きさなのかもしれない。普通のサンドシャークは四から五メートルくらい。だけどこれは……。

 何かを感じ取ったようにメリッサが床に耳を付けた。

「来るぞ、みんな気を付けろ」

 メリッサが床から跳ね退くと同時に巨大なサンドシャークが現れた。十メートルはある巨体は真っ白で、あちらこちらに傷がある。この迷宮で何度も激戦を越えてきた個体のようだ。

「なんだこいつは!? うわっ!」

 シドが体制を崩してしりもちをついてしまう。サンドシャークは大きな口を開けて真っ直ぐにシドへと向かっていった。

「させるかっ!」

 僕はシドの前に出て、雷撃のナックルをフル出力で鼻頭に叩き込む。ところが突如現れた土の塊が僕の打撃を防御してしまった。これは土魔法のシールドか!? シールドは大地に繋がっていたのでアースの役割をしてしまったようだ。電撃もサンドシャークには伝わっていない。ただ物理的な威力は盾を破壊して伝わったので、サンドシャークは大きく後方に吹き飛んだ。