「こんな小さなガキに何ができるっていうんだ」

 刃物を持っていないと思って、盗賊の一人が不用意に僕に近づいてきた。ヘラヘラしているけど目は本気だ。僕を殺すつもりでいる。出力を上げた雷撃のナックルをみぞおちに打ち込んだ。もちろん手加減はしている。そうしないと僕の拳はお腹の皮を突き破って血だらけになってしまうからね。

「セラ、雷撃の意味があるのか……?」

 悶絶している男を見て、シドが呆れたように訊いてきた。うん、ないかもしれない。普通のボディーブローだけでじゅうぶん効いているね。魔力を節約するためにも魔法付与は切っておくか。

 高速で動いて十四人の敵を次々と倒した。全員が一撃で倒れたからたいした時間はかかっていない。リタとシドは褒めてくれたけど、メリッサから見るとまだまだみたいだ。

「身体能力に頼りすぎている。もう少し無駄な動きを削ぎ落した方がいい」

「うん、こんど戦闘を教えてくれる?」

「任せておけ」

 メリッサは力強く頷いてくれた。そしてぼそりとつぶやく。

「もっと強くなってもらわないと困るからな」

「なんで?」

 リタが鋭く質問した。

「私のいいなず………………(ボッ)」

「無表情のくせに、なに真っ赤になっているのよ!?」

「…………赤くない」

 明らかに嘘だった。いいなずって何だろう? 僕の知らない言葉なのかもしれなかった。



 きついお仕置きをしたので盗賊たちは開放した。あとで名前を公表するので世間が彼らに罰を与えるだろう。そんなことより今はサンドシャークだ。つまらないことでずいぶんと時間を取られてしまったけど、僕らは夕方までに地下四階へ到達した。今夜はここで一泊して、狩は明日から始める。

「さあ、今日はシチューを作るよ」

 そう宣言するとみんなが心配そうな顔をした。

「そんな凝った料理なんて作れるのか?」

「先日は肉を焼いただろう?」

「あれは塩を振って焙るだけだろうが」

 これまでの僕を見てきたシドにとっては当然の不安だろう。だけど、前世の日本では様々な動画チャンネルを見てきた僕だ。その中には料理系もあり、レシピもぼんやりだけど覚えている。結城隼人の記憶がよみがえった僕は以前とは違う。それにシチューは野菜と肉を煮るだけの料理で、たいした手間はかからない。