固有ジョブ:曲芸師 スキル:『ナイフ投げ』『煙幕』

 戦闘力判定:Dマイナス



 戦闘力はDマイナスか。だとしたらシドのCマイナスよりずっと下だ。ちなみに僕はA、リタはCである。メリッサについてはわからないけど、僕より上だとは感じている。他の盗賊たちも調べて見たけど、全員がD以下の判定だった。

 ふと見るとこちらから顔を隠すように俯いている男がいた。なんでかわからないけど視線を合わせたくないようだ。スキャンをしてみると知り合いだった。

「あれ、ピルモアじゃないか。なんか下っ端になったみたいだけど、自分のチームはどうしたの?」

 覆面をしているのに正体を言い当てられて、ピルモアは飛び上がらんばかりに驚いていた。

「うわ、最低。盗賊にまで落ちぶれたんだ!」

 好意を寄せていたリタにまで白い眼で見られている。さすがにちょっとだけ憐れだ。

「う、うるせえ、お前たちには関係ないだろう……」

「なんだ、ピルモア、この小僧はお前の知り合いか?」

「前にポーターとして雇っていただけだ……」

「ふーん……。となると見逃してやるわけにはいかないな。こちらの正体がバレちまう恐れがある」

 メッコラは覆面を取って僕を睨みつけてきた。

「可哀そうだが皆殺しにするしかない。悪いなガキども」

「だろうね。アンタの名前がマコール・メッコラってこともわかっているよ。曲芸師さん」

 図星をつくと、メッコラの表情に焦りの色がにじんだ。

「どうしてそれを!」

「ここにいる全員の名前を知っているよ。多すぎて覚えられないけど……」

 十五人のフルネームを覚えるなんて無理な話だ。

「これはいよいよ口封じをしなきゃならないようだな……」

 盗賊たちは殺気をあらわにして僕たちとの距離を詰めた。ところがピルモアだけは怯えたように後ろに下がる。

「お、俺はやらねえ! セラ、リタ、俺はやらねーからなっ!」

 ピルモアは僕の実力の片りんを見ているから、自分は無関係だと主張したいようだ。

「なんだ、ピルモア。こんなガキにビビってんのか?」

 盗賊たちはゲラゲラと笑っていたけど、ピルモアは顔面蒼白だった。

「そいつは普通じゃねえ、レッドボアを持ち上げるような奴なんだ。手を出さない方がいい!」

「レッドボアを? あり得ねえよ」