「メリッサ、あの岩に攻撃してもいい? 後で直すから」

「うん、好きにして」

 僕は戦斧を背負った状態でみんなを見回す。注目を浴びているから緊張するな。でも、パワー重視の戦士だったらこういう武器が好きなはずだ。

「それじゃあ始めますよ!」

 戦斧を右腕に持って跳躍する。重力の呪いから解き放たれた僕のジャンプ力はちょっとした自慢だ。七メートルほど飛び上がって、戦斧を大上段に構えたところで落下が始まる。僕は戦斧に魔力を送り発動の準備を促した。そして戦斧を振り下ろすと同時にジェットを起動する。

「唸れ! 爆砕の戦斧!!」

 うなりを上げた戦斧は見えない速さで大岩に激突して、岩を粉々に破壊した。それどころか大地にめり込み大量の砂が空中高く舞い上がる。

「ゴホッ、ゴホッ! ごめんメリッサ。自分でもここまで強力とは思わなかった。これは必殺の一撃として取っておかないとダメなやつだね」

 強力な風が巻き起こり、砂煙を館の外へと押し流した。黒い刃の風使いが魔法を使ったようだ。

「小僧……何という奴だ、貴様は……」

 キャブルさんがのっしのっしと近づいてくる。怒っている?

「すみません。でも、キャブルさんのパワーなら制御できると……」

 毛むくじゃらの手が僕の頭に伸び……髪の毛をくしゃくしゃと撫でられた。それからいきなりギュッとハグされてしまう!?

「ええええっ!?」

 キャブルさんは僕を自分の肩へひょいと持ち上げた。

「見たか、各々方!? こいつは天才だぞ! うわははははははっ!」

 周りで見ていた人々も騒ぎだす。

「セラ殿、私の剣も改造してくだされ!」

「あ、はい。ガンブレードでも作りましょうか?」

「俺の盾も頼む」

「スパイラルカッターを内蔵して投げられるようになんてどうかな? キャプテン・エルドラハ……なんちって」

 皆が武器を持って僕に殺到してきたから焦ってしまった。興奮しすぎだって。全員が同時に改造を頼んでくるので対処のしようがない。

「それくらいにしておけ!」

 メリッサが大きな声を出したので皆が黙った。

「今日は普通の修理だけでいい」

「しかし、姫様。キャブル殿だけずるいですよ」

 メンバーの一人が文句を言った。

「だめ、私の部屋に招待するのだから」

 キッパリとした口調のメリッサに反論する人はいなかった。