「うん、だってそういう表情をしているじゃない」

「うっ……」

 こんなやり取りをしていたら、また周りの人々が騒ぎ出した。

「姫様の表情を読めるだと!? この小僧何者だ!?」

「お、恐ろしい奴め……」

 なにこの珍獣扱い……。

「構わぬゆえ、案内する。だが先に仕事だ」

「うん、壊れた装備品はどこ?」

「こっちだ」

 通された部屋には壊れた装備品が山のように積まれていた。これは腕の振るい甲斐がありそうだ。

「必要なものはあるか?」

「そうだな……、捨ててもいいゴミを全部持ってきてよ。もう修理しようがない剣とか弓とかね」

「わかった」

 再利用できるものが多いほど『修理』や『改造』ははかどるのだ。僕はさっそく仕事に取り掛かることにした。

「へえ、いい鎧を使っているなあ」

 黒い刃の装備は高級品ばかりだった。金属と皮を使って重量と防御力をバランスよく配分している。だけどまだまだ改良の余地はありそうだ。魔導錬成師の魂が騒ぎ出している。

「メリッサ、少しだけ改造してもいいかな?」

「どうするというのだ?」

「強度を上げて軽量化するんだ。武器の攻撃力も上げてみるよ」

「そんなことができるの?」

「お試しで一つ作ってみるね」

 柄の折れた戦斧があったので僕は持ち上げた。

「サンドシャークにやられた痕?」

「そうだ。奴らの歯は鋼鉄をも切り裂く」

「地下四階ともなると強力な魔物が多いんだね。でも、それだけ鋭い歯なら武器として利用できないかな? たとえば矢じりとかね」

「なるほど。有名なのはサンドシャークの浮袋だがそういう手もあるか」

「浮袋なんて何にするの?」

「マジックボトルの材料になるのだ。魔道具師に売ればいい魔結晶と交換してくれる」

 マジックボトルだって!? 僕が今いちばん欲しいものじゃないか。サンドシャークの浮袋がマジックボトルの材料になるんだったら、散水機の材料にもなるかもしれないぞ。

「メリッサはサンドシャークの浮袋を持ってるの?」

「ああ、今回の戦闘で二つほど手に入れた」

「見せてもらってもいいかな?」

 持ってきてもらった浮袋を確認すると、やっぱり散水機の材料になりそうだった。

「メリッサ、修理のお礼は魔結晶じゃなくてサンドシャークの浮袋じゃ駄目かな?」