見たところ、メリッサのもタナトスさんの装備も破損している感じには見えない。剣が刃こぼれでもしたのかな? 僕の疑問にはタナトスさんが答えてくれた。
「地下四階でサンドシャークの大群に遭遇してしまったのです。幸い死者は出ませんでしたがチームメンバーの装備はボロボロになりましてね。新調するにしても時間がかかると思いますので、セラ殿に修理を依頼したいわけです。どうぞ黒い刃の本拠まで足を運んでいただけないでしょうか?」
サンドシャークは砂の中を泳ぐサメで非常に凶暴だ。群れで人間を囲んで襲ってくる。
「承知しました。今日は迷宮に行く予定もないのですぐにうかがいましょう」
謝礼の魔結晶もたくさんもらえるそうなので、僕はメリッサの依頼を引き受けることにした。「シドとリタはジャカルタさんを送っていってあげて」
地下菜園とジャカルタさんの護衛は二人に任せて、僕はメリッサたちと出かけた。
◇
エルドラハの住民は月ぎめで部屋を借りている。たとえば僕とシドの住む部屋はひと月に赤晶なら三〇〇グラムで借りられる一番安い部屋だ。広さは四平米しかなく、トイレやキッチンは近所の人たちと共同のものを使う。
これがリタの借りている部屋だと事情はだいぶ変わってくる。家賃は赤晶で一キロと倍以上だけど、部屋はずっと広い二間続きだったし、トイレも各戸についていた。といっても風呂はない。僕もそろそろ引っ越そうとは思っているのだけど、地下菜園のことで延び延びになっているのだ。
このようにエルドラハの賃貸事情はそれぞれだ。だけどここはどういう場所なのだろう? 案内された黒い刃の本拠はお屋敷と言えるくらい広かった。二階建ての建物がぐるりとめぐらされていて、真ん中には中庭もある。
「これ全部が黒い刃の家なの? 広いなあ」
「四〇人で住んでいるからな」
「じゃあ、メリッサもここに住んでいるんだね」
「私の部屋を見たいか?」
「うん」
「…………後で見せてやる」
メリッサがそう言うと周りの人々が驚いていた。
「姫様がご自分の部屋に人を入れるだと?」
「ありえん。お付きの侍女以外誰も入ったことがない場所だぞ」
そんな特別な場所に招待してもらえるなんて嬉しいな。でも――。
「そんなに恥ずかしいなら無理しなくてもいいよ」
「恥ずかしい? 私が?」
「地下四階でサンドシャークの大群に遭遇してしまったのです。幸い死者は出ませんでしたがチームメンバーの装備はボロボロになりましてね。新調するにしても時間がかかると思いますので、セラ殿に修理を依頼したいわけです。どうぞ黒い刃の本拠まで足を運んでいただけないでしょうか?」
サンドシャークは砂の中を泳ぐサメで非常に凶暴だ。群れで人間を囲んで襲ってくる。
「承知しました。今日は迷宮に行く予定もないのですぐにうかがいましょう」
謝礼の魔結晶もたくさんもらえるそうなので、僕はメリッサの依頼を引き受けることにした。「シドとリタはジャカルタさんを送っていってあげて」
地下菜園とジャカルタさんの護衛は二人に任せて、僕はメリッサたちと出かけた。
◇
エルドラハの住民は月ぎめで部屋を借りている。たとえば僕とシドの住む部屋はひと月に赤晶なら三〇〇グラムで借りられる一番安い部屋だ。広さは四平米しかなく、トイレやキッチンは近所の人たちと共同のものを使う。
これがリタの借りている部屋だと事情はだいぶ変わってくる。家賃は赤晶で一キロと倍以上だけど、部屋はずっと広い二間続きだったし、トイレも各戸についていた。といっても風呂はない。僕もそろそろ引っ越そうとは思っているのだけど、地下菜園のことで延び延びになっているのだ。
このようにエルドラハの賃貸事情はそれぞれだ。だけどここはどういう場所なのだろう? 案内された黒い刃の本拠はお屋敷と言えるくらい広かった。二階建ての建物がぐるりとめぐらされていて、真ん中には中庭もある。
「これ全部が黒い刃の家なの? 広いなあ」
「四〇人で住んでいるからな」
「じゃあ、メリッサもここに住んでいるんだね」
「私の部屋を見たいか?」
「うん」
「…………後で見せてやる」
メリッサがそう言うと周りの人々が驚いていた。
「姫様がご自分の部屋に人を入れるだと?」
「ありえん。お付きの侍女以外誰も入ったことがない場所だぞ」
そんな特別な場所に招待してもらえるなんて嬉しいな。でも――。
「そんなに恥ずかしいなら無理しなくてもいいよ」
「恥ずかしい? 私が?」