「それはすぐです。この品種なら収穫までは五カ月を見ておいてください。私がスキルでサポートするので普通よりは早いはずです」

「楽しみだなあ。他の種や苗も手に入れるね」

「夢のような話ですなっ! ぜひぜひお願いします!」

 この分なら近いうちに新鮮な果物や野菜が食べられそうだ。もっともっと畑を広くするとしよう。



       ◇



 エルドラハは本日も晴天なり。空気は乾ききっていて雨の降る気配は一切ない。ここの天気は単純だ。カンカン照りか砂嵐、その二つしかない。もともと人が住めるような土地じゃないのだ。だから収容所になっているわけだけどね。僕はその地で農業を始めている。目下の悩みは水不足だった。

「畑が大きくなりすぎて散水機が足りないんだよ」

 大きなため息をついてリタとシドに愚痴った。

「散水機ならまたつくればいいんじゃない? 魔結晶のストックだってたくさんあるでしょう?」

「それがね、どこを探しても湧水杯とマジックボトルが見つからないんだ」

 砂漠で生きる者にとってこの二つは生活必需品だ。宝箱から見つかったとしても、市場に出てくることは滅多にない。たとえ出たとしてもすぐに売れてしまうのだ。前回はたまたまゴミ捨て場で割れた湧水杯をみつけたけれど、さすがに二個目は見つかっていなかった。

「邪魔をする」

 誰かがやってきたと思ったらメリッサとタナトスさんだった。

「こんにちは。今日はどうしたの? なにか困っているみたいだけど」

 僕がそう言うとリタとシドが驚いた。

「はっ? メリッサって無表情じゃない。どこをどう見たら困っているように見えるのよ」

「え? だっていつもより眉が少し寄っているし、肩を落として気落ちしているみたいじゃない」

「いや、どう見ても普段通りだろう。俺にもぜんぜんわからんぞ」

 リタとシドにはわからないのか?

「実は少し困っている」

「ええっ!?」

 ほらね。気を付けて見ていればメリッサの表情はころころ変わるのだ。その動きはすごくちょっとだから、わかりにくいとは思うけど。

「セラ、黒い刃の装備を修理してはもらえないだろうか?」

「うん、いいよ。どこにあるの?」