リタは顔を赤くして出て行ってしまった。僕もなんだか照れくさい。今度はクジラの形にカッティングすることにしよう……。



 シドをくわえて三人でスイカを食べた。

「スイカだなんて豪勢だよな」

 シドの言う通りエルドラハでは破格の食べ物だ。飛空艇は三日に一回くらいしかやってこない。運ばれる食料も限定されるのだ。

「前世の記憶によると塩をかけると甘みが増すんだ。脱水症状を予防してくれる効果もあるんだよ」

「げえっ、スイカに塩? ちょっと信じられない」

 リタはそう言いながらも、僕が『改造』した塩に手を伸ばす。シドも興味があるようで振っていた。

「本当だ。たしかに甘みが増すわね。でも、私はそのままの方が好きだな」

「俺は塩をかけるのが気に入った。これは美味い」

 好みはそれぞれのようだ。

「僕はもっとスイカが食べたいよ。この種を植えたら育たないかな……」

 シドは種ごとスイカを飲みこみながら呆れている。

「エルドラハの砂でスイカが育つのか? だいたい作ってもすぐに盗まれるぞ」

 問題はいろいろあるけれど何とかなるかもしれない。

「土は僕が『改造』で何とかするよ。場所は迷宮の目立たない部屋ならどう?」

「おい、本気か? だけど日光はどうする? 詳しくはないが植物には太陽の光が必要だろう?」

「それも何とかする。これを使ってね」

「魔導ランプ?」

 地下迷宮に秘密の畑を作るか……。なんだかおもしろくなってきた。



      ◇



 数日後、デザートホークスは地下一階の第八区を歩いていた。僕らは大量の砂を背中に背負っている。

「セラ、どこまで行く気だ? そろそろ限界なんだが……」

「オッケー、ちょっと待ってね」

 修理でシドの疲労物質を取り出し、筋肉の疲れをとってあげた。

「ふぅー……体が軽くなる」

「マッサージよりも効果があるでしょう?」

「ああ、いい気持だ」

 シドはうっとりとしている。

「リタにもやってあげるね」

「セラは平気なの?」

「うん、ぜんぜん疲れないよ」

 重力の呪いが解けてからこっち、僕は疲れに無縁だ。万が一疲れたとしても、このように修理ですぐに治せる。

「それにしてもセラはタフね。砂の他にいろんな道具まで運んで…」