今日も砂漠の収容所に監獄長のダミ声が響いている。部屋にいても聞こえるから厄介だ。

「聞け、クズども! 飛空艇が到着する日だ。今回の荷物には卵や油がはいっているそうだ。せいぜい稼いで豆以外のものを食ってみろ。腕は太くなるし、しなびた女の胸も大きくなるってもんだ。栄養を付けたらまた迷宮へ潜れ! 能無しどもの奮闘を期待する」

 相変わらず監獄長の放送は品性の欠片もない。でも卵か……。久しぶりに食べてみたいな。ジョブに目覚めてからは楽に稼げるようになったから、以前のようにお腹を空かせていることもなくなった。だけどエルドラハに入ってくる食料品はバリエーションが少なすぎるのだ。前世の記憶がある僕としてはどうしても物足りない。

「セラ、遊びに来たよ。はい、お土産のスイカ」

 リタが僕の部屋へやってきた。最近のリタは僕の部屋に入り浸りだ。

「だって、セラの部屋は涼しくて過ごしやすいんだもん」

 リタは上着を脱いでさっそくくつろぎだした。すっかり部屋に馴染んでいるのはいいんだけど、大胆過ぎて目のやり場に困ってしまう。

「アイスロッドが見つかったら、リタの部屋にもエアコンを取り付けてあげるからね」

 リタとシドにも作ってあげると約束しているのだ。

「ありがとう。でも、最近はなかなか宝箱が見つからないのよね」

 迷宮にはときどき宝箱が出現する。マジックアイテムはそこから見つかることが多い。

 リタから手渡されたスイカを受け取ると、それはよく冷えていた。

「知り合いの魔導士に冷やしてもらったの。私は隣のスケベジジイを呼んでくるから、セラはスイカを切っといて」

「了解。こんな感じ?」
『解体』を使えば、ちょっと触れるだけでスイカは好みの形に切ることができる。とりあえず、スイカの表面がバラの花束のように見えるようにカットしてみせた。花弁の縁は白く、奥に行けば赤くなるグラデーションが美しい。これも前世の記憶だ。どこかのメディアで見たのだろう。

「すごい……」

「あとでもっと食べやすく切るね。これはリタへお礼の花束だよ」

「この天然女殺し……」

「喜んでもらいたいだけだって……」

「そういうところ! とにかくシドを呼んでくる」