「それでは次の人どうぞ……って、なんか増えてない?」

 外で待っていたのは四人だったはずなのに、いつの間にか七人になっている!

「昨日から肩が痛くて……」

「わかりました。順番に診るので待っていてくださいね」

 魔力にはまだまだ余裕があるので何とかなるだろう。

『農夫』のおじさんを皮切りに、『機織り』『弓士』『左官』『パティシエ』と順番に診ていく。世の中にはいろんな固有ジョブがあるんだね。その間にも患者さんは口コミで増えて、午前中だけで二四人もの人を治療してしまった。

 クタクタになったけど怪我を直してもらった人たちの笑顔は嬉しかった。それに『スキャン』と『修理』のレベルがかなり上がったぞ。最後の方になると、注意して見るだけで患者さんのケガの具合がわかるようになってしまったくらいだ。手際が良くなったせいか、治療の時間もずいぶんと短くなった。おかげで魔力は空っぽになっちゃったけどね。

「セラ、飯を持ってきたぞ」

 シドがパンとスープを持ってきてくれた。

「ありがとう、朝からなんにも食べてないんだ」

「ずいぶんと忙しそうだったな」

「うん、もう魔力がすっからかんだよ。この魔結晶から魔力を取り出せればいいのにね」

 僕はお礼に貰った赤晶を手に取った。

「おいおい、魔結晶をそのまま食うんじゃないぞ。中毒を起こすんだからな」

「それくらい僕だって知っているよ」

 薬の材料になる魔結晶だけど、加工しないで飲みこめば体内の魔力が暴走してしまうと言われている。『薬師』とか『医者』などが適切な調合をして、初めて魔法薬となるのだ。

 僕は赤晶をテーブルに戻そうとした。でも、そのとき赤晶の構造が頭の中に滑り込んでくる。ひょっとしたら、ここから魔力を吸い出せるかもしれない……。

(おめでとうございます。スキル『抽出』を会得しました!)

「どうした、セラ?」

 喜びに震えているとシドが心配そうに顔を覗き込んできた。僕は『抽出』を駆使して、手にした赤晶から魔力を吸い出していく。燃えるような赤色をしていた赤晶はみるみる色褪せ、最後は灰色の塵となって床にこぼれた。これで魔力不足は解消されたな。

「どうなっているんだ?」

 驚くシドを正面から見て違和感を覚えた。無意識に『スキャン』が発動した結果だ。

「シド、噛み合わせが悪いみたい」

「噛み合わせ?」