「近所に住んでいるカネオンに聞いて来たんです」

「カネオンさん?」

「昨日、迷宮でセラさんに助けていただいたと言っていました」

「ああ、あの人か。うん、それでどうしたんですか?」

 五人の人々はいきなり砂の上に跪いて訴えかけてくる。

「どうか我々をお救いください。ケガのために迷宮へ行けない日々が続いています。このままでは暮らしていけません。元気になりましたら必ず魔結晶をお支払いいたしますので!」

 一般的な治癒師はツケを嫌うんだよね。迷宮は死亡率が高いので返済が滞ることがしょっちゅうだからだ。目の前の人はガリガリに痩せている。このままでは遠からず死んでしまうだろう。

「わかりました。順番に診ますので安心してください」

「おおっ!」

「えーと……」
『スキャン』を発動して、みんなの症状をざっと確認する。一番具合の悪そうなのはこのおじさんだな。足の骨折に加えて、栄養失調による内臓の荒れが目立つ。

「それじゃあ貴方から部屋の中に入ってください。一人ずつ診療しますので」

 僕の部屋は狭すぎるので二人も入ればいっぱいになってしまう。早いところ引っ越さないとだめだよね。

「涼しい……」

 部屋に入ったおじさんがびっくりしている。朝一番にエアコンをつけてしまったので室内は程よく冷えていた。

「先に言っておきますけど、僕は『スキャン』というスキルで状態を詳しく調べます。そのときに貴方のステータスもわかってしまいますが構いませんか?」

「もちろんです。ケガが治るのならジョブだろうがスキルだろうが、何でも見てください」

「わかりました。それではベッドに寝て患部をみせてください」

 慎重に包帯を外して『スキャン』と『修理』のスキルを発動した。



 治療には十五分くらいかかったけど、骨は綺麗に繋がった。

「痛みが全くない!? 普通に歩けるぞ!」

 おじさんはぴょんぴょんと飛び跳ね、脚の具合を確認している。治療中にわかってしまったのだけど、この人の固有ジョブは『農夫』で所有スキルは『農業』とか『体力増強』だった。『体力増強』はパッシブスキルで、これを持つ人は持久力が上がる。ケガさえなければ何とか窮地を凌げるだろう。

 考えてみれば、こうやっていろんなジョブの人と知り合いになれるのは便利だよね。