きっと不純物が多いからだろう。健康面にも悪影響があると思う。必要なミネラルは残しつつも『改造』で苦みの原因物質を取り除いた。出来上がった塩を舐めてみたけど、角が取れたマイルドな味になっている。これなら最高の焼き肉を作れるはずだ。

「塩がさらさらしている」

 メリッサは観察力が鋭いようだ。僕が振りかける塩の違いにすぐ気が付いた。

「特別製の塩なんだ。これをかければ……」

 フレイムソードであぶられた網の上の肉からジュージューと肉汁が溢れ出す。

「はあ……、肉をお腹いっぱい食べられるだなんて幸せ」

 リタはうっとりと自分の肉を眺めている。あんまり近づき過ぎないでね。フレイムソードでリタの顔が焼けてしまうから……。

「私、彼氏にするならレッドボアをまるまる一頭、地上に持ち帰れる人がいいなあ。おもいっきり尽くしちゃう!」

 褒めてくれているのかな? リタは優しいから尽くされる人は幸せだろう。

「さあ、焼けたよ。食べて、食べて」

 僕らは同時に焼き立ての肉を口に入れた。

「んーーっ?」

「っ! うまい……」

 リタはとろけそうな顔に、メリッサは驚きで手を口に当てていた。

「こんなに美味しい肉は初めて。どうなっているの?」

 リタは質問しながら次の肉に手を伸ばしている。

「一つは塩を改造したから。もう一つは肉を熟成させたからなんだ」

「モグモグ、セラはいろんなことができるんだね、モグモグ」

 詳しく説明すると、筋原繊維の構造を弱め、筋肉細胞の保水性を回復させ、肉が軟らかくなるようにした。それからタンパク質を分解して、アミノ酸等の旨味成分も出している。ここでも前世の知識が役に立ったな。リタは食べるのに夢中だから、説明はしないでいいだろう。小難しい話よりも食べることに専念だ。

「メリッサもたくさん食べてね」

「うん」

 ハムハムと肉を食べながら、メリッサは珍しそうに僕の家を眺めている。

「セラはここに来て長いの?」

「僕はエルドラハ生まれだよ。メリッサは?」

「私は二年前にやってきた……」

 あまりいい思い出じゃないようでメリッサの顔が暗くなった。それはそうだよね、ここは砂漠の収容所なのだから。エルドラハの内部だけなら自由に歩き回れるから、ついそれを忘れてしまうけど、ここはエブラダ帝国の管理する流刑地なのだ。