「待って! 不用意に触らないでね。そこには三連のボウガンが仕込まれているんだ」

 シドは斥候なので攻撃力は低い。それを補うための隠し武器なのだ。

「三連のボウガン? ははぁ、これがトリガーになっているのか」

「そこに板を立てかけておいたから試し撃ちをしていいよ」

 ガントレットを装着したシドが狙いを定めると、三本の短い矢が勢いよく発射された。矢は板を貫通して石壁まで到達している。

「悪くねえ! いや、すごくいいぜ、これは!」

 シドの心にくすぶった少年の心が目を覚ましたようだ。男の子ってこういうのが好きだもんね。

「ナイフが飛び出るブーツも作っておいたよ」

「マジか! 夢のような装備がそろっているじゃねえか!」

 自分用には雷撃のナックルという装備を用意した。これは拳を守る防具を兼ねた武器だ。インパクト部分の金具から放電して雷属性の攻撃もできる。前世の記憶にあるスタンガンからヒントを得たのだ。

 エルドラハには質の悪い強盗なんかがいっぱいいるので、そいつらを撃退するのにも有効だろう。出力を上げれば痺れるどころではなく、命を奪うこともできる危険な武器である。当然、魔物にも効くはずだった。

「これだけの装備があるのなら実地で試したくなるな。少しでいいから迷宮に潜ってみないか?」

「私も賛成! 行ってみましょう」

「今から?」

 太陽はだいぶ高い位置まで登っていて、迷宮に潜るには遅い時刻だ。今から準備していたらお昼前になってしまう。

「なあに、地下一階だけだよ。あくまでもお試しってことでさ。魔物の数は多いけど第六区なら赤晶が出てきやすい。新装備を試すにはいいと思うぜ」

「そうしましょう。早くフレイムソードの威力を確認したいな」

「二人が行きたいんならいいよ。水と食料だけ持って出発しよう」

 こうして、デザートホークスの活動は開始された。



       ◇



 迷宮の入り口までやってくると黒づくめの集団が地下へと降りていくところだった。一糸乱れぬ統率された動きで、独特の雰囲気を放っている。

「あれは『黒い刃』だ。今は滅んだクランベル王国の近衛騎士や特殊部隊で編成されたチームだぜ」