シドは一三歳の少年に理想のおっぱいと腰つきの話を始めた。僕だって興味がないわけじゃないけど、困ったお爺さんだと思う。

「リタの前ではそういう話はダメだからね。セクハラは厳禁だよ」

「セクハラってなんだ?」

「性的嫌がらせのこと。女の人の前でおっぱいの話はなしだからねっ!」

「わかってるって。俺もメンバーに嫌われたくはないからな。ところで、この部屋はずいぶんと涼しくないか? どうなっているんだこれは?」

「えへへ、気が付いた? 実は魔導錬成師の能力でエアコンというマジックアイテムを作ったんだ」

 僕は鼻高々でエアコンの説明をした。

「ふぇー……、これはいよいよすごいジョブが覚醒したな。それにしても過ごしやすいぜ」

 シドはうっとりと座り込んだ。さっそくエアコンのとりこになったようだ。これで冷えたビールなんて飲ませたら、僕から離れられなくなってしまうかもね。



 リタをみたシドの第一声は、「ウホッ、いい女!」だった。本人に悪気がないのはわかっているけど、いきなり約束を破っている。もっともリタはそれほど気にしていない様子だったので良かった。

 狭い部屋に三人はきつかったけど、エアコンのおかげで暑苦しさはない。リタは驚きつつも、過ごしやすいと喜んでくれたので、打ち合わせは和やかに始まった。

「それじゃあ自己紹介からはじめようか。改めまして僕はセラ・ノキアです。固有ジョブは魔導錬成師で、スキルは『修理』や『改造』、最近になって『スキャン』というのも憶えました。夢は飛空艇に乗ってエルドラハの外の世界へ行くことです。よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げると、リタとシドが拍手をしてくれた。

「セラはただの魔導錬成師ってだけじゃないもんね。パワーとスピードのある回復職だから、何でもできると思うわ」

 一緒に戦ったことのあるリタがべた褒めしてくれた。

「みんなのために頑張るよ。次はリタが自己紹介して」

「私はリタだよ。ジョブは剣士でスキルは『パワーショット』とか『身体強化』とかね。趣味は美味しいものを食べること。好物は肉。よろしくね」

 リタの自己紹介が終わると、シドが小さく咳払いした。

「シドだ。斥候で『隠密』とか『トラップ解除』なんかのスキルを持っている。地下五階までの地理なら頭の中に入っているから何でも聞いてくれ」