声から判断するとフードの人は女性のようだ。クールな声だったけど、心配そうな色もにじんでいる。魔道具師はしばらくネックレスを調べていたけど、やがて顔を上げて首を横に振った。

「細工が細かすぎます。私では修理は無理でしょう」

「そうか……。邪魔をした」

 女の人はネックレスを受け取り、僕の方へと振り返る。そのときにフードの奥の顔が見えた。まつ毛が長く、どこか悲しみをたたえた切れ長の瞳が印象的な人だ。髪は黒髪で眉の上で切りそろえられている。先ほどの印象そのままに忍者とかアサシンを連想させる人だった。

 その人はチラッと僕を見て、そのまま行きすぎようとした。僕は思わずその背中に声をかけていた。

「待って」

 女の人は足を止めて僕をじっと見入る。鋭い視線にたじろぎそうになるけど、僕は話し続けた。

「僕なら直せるかもしれません」

 その人は壊れたネックレスを懐から出した。

「これを?」

「はい。僕は魔導錬成師のセラ・ノキアです」

「魔導錬成師? 魔道具師とは違うのか?」

「違いはよくわかりませんが、僕には『修理』というスキルがあります」

「ふむ……」

 その人は見れば見るほどミステリアスで、黒い瞳に吸い込まれそうな錯覚さえ覚える。

「対価は?」

「対価って?」

「修理にはいくらかかるかと訊いている。銀晶なら二〇〇g、金晶でも五〇gくらいならあるが足りるか?」

「ああ、値段のことなんて全く考えていませんでした。困っているみたいだったから声をかけただけで……」

「そうなのか」

 このお姉さんはかなりの魔結晶持ちのようだ。普通の住人で金晶や銀晶を持っている人なんかまずいない。よほど上位のチームに所属しているのだろう。

「それを見せてもらってもいいですか?」

 かなり大事なモノらしく、黒髪のお姉さんはためらっている。僕が子どもだからかもしれない。

「持って逃げるなんてことはしませんよ」

 そう言って安心させると、お姉さんはゆっくりとペンダントを僕の手のひらの上に置いた。

 さっそく『スキャン』で調べると、材質はマジカルゴールドとエメラルド、緑晶と青晶、妖精の粉を使ったインク、ユニコーンの角の粉末といったことが判明する。だがこれはそれだけの品物じゃない。