おいおい、雲行きがあやしいどころじゃない、嵐になっていますよ!? イージーモードどころか、かなりのハードモードの予感がしてきた。だけどまだ希望を捨ててはダメだ。異世界転生と言えば恒例のアレがあるじゃないか。そう、チート能力というやつだ。転生させる代わりに特別な力が得られたりするアレですよ。

「えー……僕は特別な力を手に入れたりしますか……?」

 おそるおそる尋ねると、システムさんはしっかりと頷いてくれた。

「貴方には魔導錬成師という特別な固有ジョブに就きます。与えられるスキルも強力なものが多いですよ」

「それを聞いて安心しました! よかったー。説明を聞いたときはどうなるかと思いましたけど、特別な力があるのなら安心ですね」

「はい。ただ、固有ジョブが開花するのは貴方の魂が現地に馴染む三年後です。それまでに死なないようにたゆまぬ努力をお願いします。貴方が死ぬと次の候補者を送り込まないといけませんので」

 やっぱりハリケーンが吹き荒れている!

「固有ジョブに就くまでもう少し早くなりませんか?」

「無理です」

 あっさり!?

「それから、貴方が送り込まれる段階で現地の少年、セラ・ノキアは重力の呪いにかかっています」

「なんですかそれは?」

「迷宮のトラップに引っかかったのですよ。日増しに体が重くなる呪いです」

「ちょっと待ってください!」

「以上で説明は終了です」

 無視ですか!?

「収容所で呪いとかヤバ過ぎじゃないですか」

「それでは転生の手続きに入ります」

 システムさんはクールに僕をスルーした。そしておもむろに手を伸ばして印鑑を取り上げる。

「どうか話を聞いてください!」

 最後のお願いもむなしく、机の上に広げられた書類にバチコーンと印鑑が押される。その瞬間すべての照明が消されたかのように世界は暗転した。