アイスロッドを手に持って『改造』のスキルを発動すると、頭の中にエアコンの設計図ができあがっていく。どうやら青晶と緑晶があれば作ることができそうだ。都合のいいことにどちらもダンジョンから持ち帰ったものがたくさんある。

 これで気持ちよく午睡(シェスタ)を満喫できそうだ。そうなると冷たい飲み物も欲しいから冷蔵庫も作りたいな。そのためにはアイスロッドがもう一本いる。どこかにおちていないだろうか?

 瓦礫を掻き分けていると後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。

「んあっ? てめえはウスノロのセラじゃねーか。生きていやがったのか!?」

 そこにいたのはリタや僕を見捨てて逃げだしたピルモアだった。まさか地下四階から脱出できるとは思ってもみなかったのだろう、幽霊でも見るような目つきで僕を見つめている。その様子は以前よりも落ちぶれた感じだ。装備はボロボロのままだし、顔色も悪い。

 命からがら脱出したので魔結晶をほとんど持ち帰れなかったにちがいない。探索が赤字になって借金でもしに行くのかな? 街はずれのゴミ捨て場を抜けると、高利で金を貸すヤバい連中がうようよいる地区になる。だからといって同情する気持ちにはなれないけど。

「……」

 特に話すこともないので、僕はピルモアを無視してエアコンの材料探しを続行した。シドが帰ってくる前に完成させてびっくりさせたかったのだ。ところが、ピルモアはどこにも行かずにつまらないおしゃべりを続けている。

「それで生き延びて地上でゴミあさりかよ。まあ、お前には似合っているけどな」

「……」

 お、この金具は使えそうだ。

「こら、ウスノロのくせにシカトすんなっ!」

 ピルモアはいつものように、いきなり殴りつけてきた。きっと余裕で張り倒せると思っていたのだろう。だけどもう以前の僕とは違うのだ。

 僕はその拳を左手だけで受け止めた。パワーは格段に上がっているので奴の拳はピクリとも動かない。

「なっ……」

 驚きで言葉が出てこないのかな? まあ、重力の呪いにかかっていた頃の僕とでは雲泥の違いだからね。腕力ならピルモアに負ける気がしない。じっさいのところピルモアの戦闘力ってどれくらいなのだろう? そうだ!