セラ・ノキアにとってはいつもの光景だけど、元日本人結城隼人としてはこの生活は許容できない。こんなに疲れて帰ってきたというのにシャワー一つ浴びられないのだ。とりあえずもう少し文明的な生活がしたいというのが本音である。

 こうなったら魔導錬成師の力を使ってよりよい生活を求めてみようか。システムさんも好きに生きていいと言っていたもんな。修理と改造を駆使して暮らしに役立つものを作るのも悪くない。そうやって行けば、やがては飛空艇に乗る機会だってやってくるだろう。

 とりあえずゴミ捨て場の方へ行ってみようかな。あそこは使えなくなった生活品や魔道具が捨てられている。ひょっとしたら役立つものが落ちているかもしれない。普通の道具も修理すれば魔結晶との交換もできるはずだ。そう考えた僕はまだ日差しの強い午後の街へと出かけた。



      ◇



 これまで注意してゴミ捨て場を見たことなんてなかったけど、今の僕には宝の山だった。町外れにある瓦礫の山に分け入って、使えそうなものはないかと物色していく。割れたお皿が多く、これらを修理して売るだけでそれなりの儲けにはなりそうだ。だけど欲しいのはそんな小物じゃない。狙うはズバリ、マジックアイテムだ。

 マジックアイテムを修理すれば大量の魔結晶と交換できるだろうし、戦闘の時も役立つはずだ。それに改造してまったく別の用途で使うという手もある……。

「なにかないかなあ。んん……? あれは!」

 最初に見つけたのはぽっきりと折れたアイスロッドだった。アイスロッドは氷冷属性の攻撃魔法を繰り出す魔道具で、火炎属性の魔物にはやたらと有効だ。見つけたアイスロッドは先端部分がないうえに、持ち手のところにもひびが入っていた。全体的に錆びているので、腕のよい魔道具師でも修理は不可能だろう。だけど僕なら……。

「うん、なんとかなりそうだ!」

 と、ここで名案が浮かぶ。このアイスロッドをそのまま直すのもいいけれど、これでエアコンが作れないだろうか? エルドラハの昼は暑すぎるのだ。暖房機能はなくてもいいので、冷風だけがでる装置を考えてみた。