シドの目が心地よさそうに閉じられている。真っ白のゲジゲジ眉毛も心なしかタレ下がっているような……。こうしていると、白髪の厳めしいひげ面も、なんとなく好々爺にみえてくる。

「はい、これでいいはずだよ」

 傷口は赤ちゃんみたいなピンク色の肌になって、すっかりきれいになっていた。

「たいしたもんだ。な、言ったとおりになっただろう?」

「なにが?」

 シドはニヤニヤと笑っている、

「ジョブっていうのは遅ければ遅いほどすごいのがもらえるって教えてやっただろう? セラはとんでもないジョブをもらったってわけさ」

「そう言えばそうだね。これからはこの力を使って今までの苦労を取り戻すよ。リタって戦士とチームを組むことにしたんだ。シドも一緒に迷宮へ潜ろうよ」

 僕はリタとの計画をシドにも打ち明けた。迷宮に詳しいシドが仲間になってくれれば鬼に金棒だ。きっとすごい冒険ができると思う。

「しかしなあ、俺はごらんの通りの老いぼれだぜ。いまさらセラの役に立てるとは思えないぞ」

「大丈夫だって、シドの知識はすごいんだから」

「うーん……」

 シドは煮え切らない態度を崩さない。

「セラのスキルで俺のしょぼくれた体も修理できれば力になれるんだがな……」

 シドは冗談のようにそう言った。きっと諦めの混じった皮肉だったのかもしれない。でもそれは悪くない考えだった。

「うん、やってみるよ!」

「お、おい、やってみるって?」

「アンチエイジング!」

「あ、あんちえ?」

 僕はシドの手を握って体の構造を調べる。肉体を若返らすにはかなりの魔力が必要になりそうだ。難しい作業になりそうだけどシドのためなら躊躇はしない。五年前に両親が亡くなってから、ずっと僕の面倒を見てくれたのがシドだ。重力の呪いにかかってからも決して僕を見放さなかった。この恩は絶対に返すんだ。

「大丈夫そうだよ。魔力が足りないから見た目はそのままだと思うけど、肉体の方は必ず若返らせるからね」

「お、おう……」

 シドは半信半疑といった具合でこちらを見ていた。



 二時間後

「どう、おかしなところはない?」

「いや……びっくりするくらい体が軽い……、なんだかふわふわするよ」

 あ、わかる。僕も重力の呪いが解けたときはそうだったもん。

「どれ……」